2007年7月6日(金)
嬉野であります。
まだ、私が小さな子供だった頃。
今となってはすっかり宅地になってしまった九州の私の実家の近所には、まだ、のどかに田んぼが広がっておりました。
春先、代掻きとか農作業が始まる前には、一面にレンゲの花が咲いておりましたねぇ。
遠くから見るレンゲの花の群れはきれいでね、晴れた日曜の昼下がりなんぞには、四つ上の姉に連れられて、愛らしくレンゲの花を摘みに行ったりしたこともありました。
三つくらいの頃のことね。
もう40数年も前の春の昼下がりですよ。
貧しく花摘む愛らしい私ら姉弟の直ぐ横を、どこから飛んで来るのかミツバチがね、
花から花へと熱心にブンブンと蜜取りをしておったものですよ。
でも奥さん。あれは、あれなんですよね。
ミツバチは蜜を吸いっぱなしということではなくてね、花粉もお尻につけてさ、そのあと行った先の遠くの花と受粉させてやるという、媒介者の役目も果たしているのでしょ。
ミツバチ本人の自覚しないところで。
つまりレンゲ草の願いとしてはさ、
自分は動けないけど自分のDNAは出来るだけ広範囲に残しておきたいという一念があるからね、それを成就させるためには、「さて、どうしたもんか」と考えたわけでしょう。
で、思いついたわけだ。
「あぁ、蜂をおびき寄せれば、あっちこっちに花粉を播いてもらえるかもしれん」と。
だから甘い蜜を頑張って作ってね、蜂をおびき寄せる作戦にでた。
で、まんまとやってきた蜂がね、蜜を無心に吸っている間に、フンフンと陽気にお尻を振るもんだからね、その蜂のお尻に花粉がいっぱいつくような仕組みにあれはしてるのよね。
ところが二十代の頃の話ですよ、奥さん。
映画の仕事でアマゾンへ行く事になりましてね。
参考試写ということで、それまでアマゾンを舞台に製作されたいくつかのドキュメント映画を見たのですよ。
その中に一本興味深い作品がありましてね、
今でも忘れず覚えておるのですよ。
それは熱帯の着生植物でありますところのランの生態を紹介した映画だったですね。
その映画の中で、私は実に奇妙な光景を見たのです。
そのランは甘い蜜など作っていないのです。
それなのに蜂はやってくるのです。
おかしいですねぇ。
なんと奥さん、そのランのメシベというのがね、
驚くことに蜂のメスの形をしているのですよ。
蜂はどうやら、そのメスにしか見えないメシベに挑みかかろうと、
ブーンなんつって、そのランの花の中にまんまとやってきてしまうようなのですよ。
蜂はもうね、盛んに抱きついてましたよ、ランのメシベだとも知らずに。
「オカシか光景やねぇ」と私は九州弁の心で興味深く見てましたが、
「オカシかこと」はまだ続いたのですよ。
蜂の抱きつきが、ある一定時間過ぎた頃でした、
夢中でメシベに抱きついてる蜂のお尻をね、不意に何かが引っぱたいたんスよ。
バシッ!つって!
花の中の出来事スよ、奥さん。
これには、映画を見ていた誰もが驚愕いたしましてね、
ですが尻をいきなり引っぱたかれた蜂本人はもっとビックリした様子でね、そのまま慌ててどっかへ飛んで逃げて行きましたね。
驚愕のできごとです。
引っぱたいたあれは、きっとランのオシベだと思ったんですが、
とにかくバネ仕掛けみたいな按配になっていたのですよ。
つまり、ランのオシベ(だかどうだかわかりませんがね)が、ランのメシベに抱きついてる蜂のお尻にね、予定時間を超過したら蹴りを入れる仕組みになっておったわけですよ。
「はい!そこまで!」みたいな感じで。バシッと。
まったく、幼少の頃、春先のレンゲ畑で花摘みに興じていた貧しくも素朴な過去しか持たない私には、熱帯雨林で繰り広げられるその光景が、にわかには信じがたかったです。
「どういうこつか…」
「植物がこげな仕掛けを考えるとか」
「それには、あまりにも人間ぽくなかか…この仕掛け」
「まるで機械仕掛けじゃなかか…」
みたいなね。
「????…?」みたいな。
だが、私はピンときた。
で、「ははぁ?ん」と思いました。
「多分こいつらヒマなんだな」と。
奥さんバカにしたでしょ、ぼくのこの結論。
しかしおそらく間違いないんですよ。
熱帯雨林気候のあの辺りは、つまり年がら年中夏ですよ。
そうでしょう奥さん!
つまり毎日が夏ということでしょ。
雨だって豊富に降る。
つまり、あの辺りにはエネルギーが何十万年もの間、日々過剰に降り注いでいるのですよ。
北海道なんかとは、わけが違う。
北海道の夏は短いですよ。
でも熱帯の夏は長い!
長い?
いや長いというのか、夏しかないわけでね、長いといえばそらもうべらぼうな長さです。
昨日の雨で出来た水溜りと、太平洋のでかさを比べるようなものですよ奥さん。
ですから、そのエネルギー量の差といったら話にならないくらいの開きがあるでしょうよ。
じゃぁ、エネルギーが豊富ということはどういうことかと言えばですよ奥さん、
それだけ生きることが日々困難ではなくなるということになりはしませんでしょうか。
さぁ奥さん、お考えくださいな。
つまりですよ。厳しい冬がくるから、それを乗り切るためにエネルギーのほとんどを越冬に費やす寒冷地のご家庭は、暖房費で出費が多くて貯金もできませんがね、
「冬?なんですの?それ?」
みたいなことをね、口走ってしまうほど気候の好い保養地にお住まいのご家庭はね、暖房にお金なんか充てる必要がないのでね、その分貯金しちゃってね、
「わたくし株やってますのよ奥さん。けっこうなお小遣いになりますの。ほほほほ」
みたいなね、差が、自然と出来ちゃう。
そうするとハウスキーパーさんなんかを雇う余裕も出来ちゃうもんだから、
掃除、洗たく、ご飯の用意もみんな他人任ということになりますでしょう。
で、ついつい油断してると日常的にヒマを感じるようになって退屈してしまうことでしょうよ。
「そんな感じだな、熱帯雨林のあのランは」。
私はそう直感したのです。
あのランもね、株とかやるくらい余裕あるんですよ、だからヒマなんですよ。
だから退屈しないようにね、あんなどうでもいいような仕掛けを考えて遊んでる。
熱帯の環境は植物が生きるのに楽だし、その環境だって変化しない。
毎朝6時に日が昇って、毎夕6時に日が沈む。
これがもう何十万年も続いてるわけですよ。
生命は反復というものを嫌います。
だって退屈するでしょう?奥さん。同じ事の繰り返しでは。
だから、退屈しないで済むように、どうでもいいような面倒くさい事を考え始めて遊ぶ。
面白がるということで反復を避けているのですよ。
「植物だって人間と同じなんだ」と、私はなんだかドキドキしましたよ。
熱帯はエネルギーが過剰にある。だから、そこで生きてるやつに余裕がでる。
そんな環境にいるから、ランという植物でもヒマを感じるくらい暮らし向きが好くなり、そのヒマをなんとか楽しもうと、あの蜂の尻を叩くという生殖の仕掛けを考え付いたんだなと、私は思うのですよ。
そして、思いついたことを実現するだけの時間もまた、あったということですよね。
ところが蜜を吸わせるわけではないから、蜂には満腹感が来ない。
だから適当なところで蜂をびっくりさせないと蜂も出て行かない。
きっと初期段階では、その辺の失敗もしてるんじゃないでしょうか、このランは。
「そーだった。これじゃいつまでも蜂が出ていかないぞ」
「こりゃ考え直さねば」
みたいな時期もあったと思いますね。
で、追い出すためにオシベで蹴飛ばすことを考えた。
実際やってみて初めて気づく不都合というのは仕事でもよくあることですよ。
商売繁盛の基本みたいなことです。
実に素晴らしいですね。
生命の神秘ですよ。
生命の神秘はヒマから生み出されているというのは驚きですね。
(まぁ驚きですねぇて言ったってオレの与太話なんだけどね)。
それに、やってくる蜂だってね奥さん。
きっと生活にゆとりがある熱帯の蜂だから、あのランの仕掛けに付き合ってられるのだと思いますせんか?
もし北海道の蜂だったらですよ、冬を越す前に蜜を集めなければやってけなくなるからね、蜜が取れないんだということをそのうち学習してね、もうだまされなくなるはずだね。
「なんだよ、もう」と。
「もうあいつとは遊んでられない。生きるためには蜜を取らなきゃならないんだから」
みたいなことになるわけでしょ。
それをね、いつまでも付き合っているということはね。
蜂にしても余裕があるということでしょ。
「蜜なんか、いつでもあるとこ知ってっから」
みたいなね、蜂も蜂で適当に遊んでるわけだ。
だからいつまでも学習しない。
「いやぁ、今日もなんかメスに夢中になってたら、いきなりビックリしちゃったなぁ」
「あれ?あそこにもメスがいるぞ!それいけぇ」
なんてなね、立ち上がったら忘れてたみたいなさ、呑気な蜂でいられるわけですよ。
それでも生きていけるからだね。
好いねぇ、ゆとりというのは。
でもね。
あれね。
もしですよ。
ランの代わりにね、次から次へと新しい生殖の仕組みを考えてくれる奴が、もしいたら。
つまり、ランの代わりにヒマつぶしを考えてくれる奴が他に居たら。
ランは、ヒマを感じてもね、もう自分が楽しめることを自分では考えなくなるのかなぁ。
したら、自分に熱中する訓練が出来なくなって、結局、他人が考えてくれたヒマつぶしがないと、もうヒマを持て余して死ぬほど退屈するという悲しい植物になるのかなぁ。
「あぁヒマだな。なんか面白い事ないかなぁ」
「ランさん、如何ですか、このような奇抜な生殖システムを当社で開発いたしましたが」
「お、これは奇抜だね。楽しそうだねぇ。おいくら?」
「5万円です」
「じゃ、もらっとこうか」
「こんどの日曜日に取り付けにお伺いいたしますから」
「あれ、取り付けもやってくれるの」
「サービス第一ですから。ランさんのお手間は一切掛りません」
「楽だねぇ。オレなーんもしなくて好いんだ」
でもね。
そんなサービス浸けの世の中に居ちゃいけないなって、
わたしらはみんな、なんとな?く、ぼんやりとは分かってるんだよね。
自分を楽しませる事を、他人任せにばかりしていてはいけないって、
どっかでわかってはいるんだよね。
どうも話が長くなっていけないね。
これもヒマなるがゆえということでしょうか。
これも皆さんには迷惑。
すんません。
それでは奥さん、また来週!
あ!来週の月曜と火曜は、私たち出張でして、
ですから今度お会いできるのは水曜日だと思いますですよ。
ちょいと長いお留守ですが、みなさん、おたっしゃで(笑)。
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(16:37 嬉野)
2007年7月6日(金)
2007年6月29日(金)
2007年6月29日(金)
本日も嬉野です。
藤村先生は、今ほんとうに忙しいのでね、
本日も嬉野が日記を書いておりますよ。
明日は、夕張に藤村先生と二人でおじゃまいたします。
夕張の皆さん、よろしくお願いしますね。
いきなりですが、私という人間はね、風呂の残り湯みたいな男でしてね、ほっとかれると、ちゃぽんとも言わず、そこにいつまでも溜まっているだけの男でして、誰かに掻き回してもらったり、汲み替えてもらったりしないと動きが付かない。
多分、付き合うと鬱陶しいくらい手間のかかる男なんだろうなぁと思いますよね。
ですから、うちの奥さんとか、隣の藤やんみたいな人が近くに居てくれて丁度よかったなと、折に触れ思うのでありますよ。
あの方達は、やたらと周りを掻き回す民族の方たちですからね。
ご本人たちには、掻き回しているお気持ちは無いでしょうけど結果的に掻き回してると言うね、民族の方たちですからね。
その方たちのお陰で、風呂の残り湯としては濁らずに済んでるわけですからね。
縁というものは、ありがたいものです。
これが、私の周りが全部ね、風呂の残り湯でしたら困難なことになりますよ。
日々、全員で澱んでいくばかりでね、もうドンヨリですよ。
加えて、風呂の残り湯には、風呂の残り湯を面倒みるだけの気概はありませんからね、お互いが、お互いを重荷と見てしまう恐れがありますね。
反対に、かき回す方たちは、かき回す方たちでね、かき回されたくない人の側にいたら迷惑がられる事もあるようでね、風呂の残り湯くらいが溜まってる方が気晴らしになるようですよ。
なんだか知らないけど、やりたい!やりたい!と騒いでると、その行為が自然と風呂の残り湯を掻き回してることになるわけですからね、当然掻き回す方の重荷にはならないわけでね、風呂の残り湯にしてみれば、どんどん掻き回されて、好いゾウ!好いゾウ!みたいな按配なんだろうかなぁと、思うわけですよ。
まぁ、常にだとは言いませんが。
ただまぁそんなことだと思うことがあるのですよ、折にふれね。
四十も幾つか歳を越えるとそんなことも思うわけですよ。
人間、個性というのは、きっと数え切れんほどあるのだろうなぁと思うとね、その個性の支え合いというものも、人知れずいろんな組み合わせがあるのだろうと推察いたしますね。
このところ来年のドラマの準備でね、私は、プロデューサーチームとして四宮Pと行動を共にする事が多くなりましたね。
あの方の生態も実に興味深くてですね、一緒に居て飽きる事が無いですね。
その四宮Pがですね、今日、取材の帰りに入った珈琲屋でね、何かの拍子にポツリと言ってましたよ。
「人は能力で評価しちゃいけないんだよ。その人の個性で評価しなければいけないんだよね」
自分に言い聞かせるように、思い出すようにつぶやいておりましたよ。
風呂の残り湯といたしましてはね、そんな言葉を上司の口から漏れ聞きますとね、「あぁ、残り湯だと見破られても、とりあえず安心だな」と安堵しましてね、昼飯の銀だら定食も美味しくいただけたということでありますよ。
四宮Pが、どこでそんな考えを持つようになったのか、どんな経験を踏んできたのか分かりませんが、おそらく、自分の苦い経験も踏まえてのことなのかなぁとも思ったりしたわけでありますよ。
私は、先日「人体の不思議展」で、本物の人体を目の当たりにしましてね、ただただ、私らの人体の出来具合の優秀さに驚嘆したのですよ。
こんなものがこの世に普通に実現してること自体が信じられないくらい不可思議に思えてしょうがないのですよ。
いったい誰が、この人体という、こんな物凄い仕組みを作り上げることに成功したのか。
そして、この人体が出来上がるまで、どれだけの途方も無い時間が必要だったのか。
もう分かる人はいませんよね。
ぼくらにその苦労を教えてくれる人は居ないのですよ。
ぼくらだって、自分の人体とは、生まれてこの方ずっと一緒だから、これであたり前だとしか思ってないし、ましてや人体の内部なんか見る機会も無いから、人体の驚嘆すべきありようなんか知ることも無いわけで、当然興味も湧かないわけですよね。
でも、ぼくらは、きっと誰かに託されたんですよね。
この人体という完璧なメカニズムをね。
「これ、やっと出来ましたから。これでもう、ちゃんと生きていけるはずですから。これが出来上がるまでに、ものすごい時間と犠牲が必要でしたけれど、これ、やっと出来ましたから」
人体を作り上げることに係わってきた、ぼくらの祖先が今いたら、そんなことも言ったろうかと思いますね。
「大切に、上手に使ってくださいね」
そんなことを言われたような気が、今、少しします。
じゃ、本日もなんの結論も無く日記終了。
また来週も来てください。
奥さんのみなさんもお元気で。
では、また来週お会いいたしましょう。
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7月1日(日)同じく深夜に第五夜?第九夜まで一挙放送!
(関東ローカルでの特別編成となります、全国放送ではありません)
(16:19 嬉野)
2007年6月28日(木)
2007年6月28日(木)
嬉野です。
うちの奥さんがまた旅に出ました。
だから、まぁね、
そんな報告をここの日記でするこたぁないでしょうと、
言う事ですよ。
そんなことよりね、編集室ではね、
今も藤村先生がDVDの編集に邁進されておられるわけでね、
むしろ世間のみなさんは、そちらの状況をこそ知りたがっておられるわけでしょうと、そっちの報告を熱心にしなさいよと、言う事ですよ。
私としてもね、
もちろんそこのところは重々承知しておるわけでね。
ただまぁ、実際書き始めるとね、なんとなくそういう風に書きだしてしまう自分がいるわけでありますよ。
だからそれはね嬉野さん、公私混同というものだと言う事ですよ。
世間の皆さんがね、知りたいと思っておられる情報をお知らせするというのが、ここのとりあえずのお役目でしょうと言う事ですよ。
でもね、さっきも編集室を覗きましたけどね。
忙しそうなんだもん。彼。
そういう状況の男にね、
「どうですか!調子は!」
とかなんとか聞いたってね、あまりにも藪から棒でね、怪訝な顔で睨まれるのが関の山なわけですよ。
そうすると、とりあえずね、我が家の家庭の事情を書き始めてお茶を濁してしまえと思う自分がいるわけですよ。
しかし、いざ書き出してみるとね、
さすがに、こんなのん気な事を書いてどうすると思う自分もいるわけでね、だからといってね、一旦書き出したことを消すのももったいないからね、その後ズラズラとね、バカ正直に書き連ねてね、現在にいたるわけですよ奥さん、率直な話ね。
ということで、えぇ、うちの妻がまたバイクで旅に出まして、
今頃は日本海を新潟へ向けて南下中かしら。
無事で帰ってきてちょうだいね。
ということでね、本日も極私的な話題で日記をしめくくる嬉野でありますよ。
それではみなさんもお元気で、
今日一日を乗り越えてくださいますように。
明日も来てね。
きっとよー!
すんませんでした。
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(16:32 嬉野)
2007年6月27日(水)
2007年6月27日(水)
嬉野です。
いつだったかの夏のこと。
私は、札幌の街中を一人で歩いていました。
いったい何処へ向かっていたのか、
それはもう思い出せないのですが、
日の長くなった札幌の夏を気持ち好く眺めながら、
スクランブル交差点を渡っていたのです。
すると、前方に私と同じ様に交差点を渡ってくる制服の一団がありました。
日焼けして、顔にまだ幼さの残る彼らは、
多分高校生だったのだろうと思います。
女の子もいれば男の子もいました。
20人くらいいたでしょうか。
彼らは三々五々にバラバラと、こちらへと交差点の中へ向かって来るのです。
人ごみの流れに紛れるようにバラバラと歩いてくる彼らでしたが、紺色のスカートやズボンのせいで、彼らが同じ集団だということはひと目で分かりました。
あの日は、ほんの少し蒸し暑い日で、
その時には日も沈みかけ、でも辺りはまだじゅうぶんに明るく、
ちょうど夕方の風が吹き始めた頃でした。
私は、ちょうど交差点の中ほどに差し掛かっていました。
その時、私の直ぐ横を擦れ違っていこうとする先頭の制服の女の子が、いきなり歌いだしたのです。
私は驚いて、とっさにその歌声の主に目を向けました。
するとその女の子の周りにいた数人の男の子たちが、その歌声に反応して一斉に歌いだしたのです。
あとはあっという間の出来ごとでした。
今まで交差点の奥をこちらへと、バラバラと歩いて来るだけだった制服の子たちが、ぼくの隣を過ぎ行こうとする歌声目掛けて物凄い勢いで走り寄ってきて、遅れじとばかりに歌い始めたのです。
あっという間に交差点の中でコーラスが始まってしまったのです。
初め、一人の女の子の歌声にすぎなかったその声が、
あっという間にそのソプラノのメロディーラインに各パートの声が重なり重なり、歌声は私の直ぐ横で物凄い広がりを見せ始めたのです。
それはもう見事なものでした。
私は、鳥肌が立つような思いで、その過ぎていく歌声に耳を奪われるばかりでした。
なんだかとても神々しいものを聴くような想いで、私は彼らの合唱を聴いていたのです。
たった一人の歌声を切っ掛けに、その歌声に追いつけとばかり、彼ら彼女らは瞬時にまとまることが出来たのです。
そして今や統制の執れた一団として交差点を渡って行くのです。
私はその時、生まれて初めてコーラスというものを聴きました。
中学の時も、高校の時も、なんの興味も持とうとはしなかったのに、私はその瞬間、歌声の素晴らしさに圧倒されていたのです。
「こいつらカッコ好いなぁ」
私はおそらくその時、尊敬の眼差しで、合唱する彼ら彼女らを見送っていたのだと思います。
いまだに夏が来ると、
私は、あの高校生たちのことを思い出します。
そしてやっぱりその度に、「カッコ好いなぁ」と思ってしまうのです。
私の夏の思い出です。
さて、藤村先生は本日もDVDの編集に邁進されております。
ではみなさんまた明日。
本日も嬉野でした。
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(19:04 嬉野)
2007年6月26日(火)
2007年6月26日(火)
嬉野です。
ずいぶんなご無沙汰をしておりました。
久しぶりの登場でございます。
みなさんは、お元気でありました?
実は私、昨日ちょっと変なものを見てきました。
「人体の不思議展」というものを見てきたんです。
しかし、なんで私はそんなもの見に行く気になったんでしょう
。
ただ、なんだか不意に、とっても見たくなったのですよ。
そうそう、うちの奥さんが見に行くんだと張り切っていたのが事の起こりでしたよ。
ある日、「人体の不思議展」を見に行くんだとあの人がいうわけです。
「ハァ…」てなもんでしたよ私は。
でもあの人は、「早く行かないと終わっちゃう」とか言うわけです。
本業が鍼灸師の人ですから、人体の構造に関しては、ぼくなんかよりよっぽど知識がある。だからこんなに張り切っているのかしらと思いましたが、なにも人体模型を見に行くことにそんなに張り切らなくてもいいじゃないのよと怪訝に思っていたところへ妻が言うのです。
「あんたも一緒に見に行く?」と、
いきなり聞くもんだから、
「えぇ!オレはいいよ。人体なんてよくわかんないし、だいいち模型だろう」と咄嗟に本音を口走る。
すると妻は「こいつ、なんにも知らねぇ」と言わんばかりの視線を私に送りつつ言ったのです。
「違うわよ。全部本物よ」
「はぁ?」
ぼくは妻の言っている言葉の意味がよく理解できませんでした。
全部本物。本物?
本物ってなんだよ。本物ってどういうことだよ。
模型じゃないってこと?
つまり生きてた人って事?
え?生きてた人の体で標本作ったの?
うぅぅそんなことして良いの…。
生きてた人が死んだ後に標本に…あぁぁよくわからない。
「つまりあの、全部本物の人体…」
「そうなの。あたしも初めはビックリしちゃったの。だって精巧な模型だとばっかり思ってたんだもの。でも行ったら違うって書いてあるのよ。全部ほんものの人の体。ある時点まで生きていた人たちばかりなのよ」
「マジでか…」
「あたしこの前来た時に見に行ったからこれで二回目だけど、とっても好いのよ」。
「好いのか…」。
いったい妻が、何がどんなふうに好いと言いたかったのかは分からないまま、
「そんなら行くか」と、つい言ってしまった私の「そんなら」も、どんなそんならなのか自分でもよく分からないまま、それでも私は「人体の不思議展」を見に行かなければいけないような気持ちになってしまっていたのです。
そして昨日。
夫婦して「人体の不思議展」へ行ったわけです。
「ほら、あれがアキレス腱。かかとのところ、あれ一本でつなげてるでしょう」
「切れやすいわけだよね。一目でわかる」
「でも、一本だけでつなげてるからきっと微妙な調節が利くのよ」
「足の指から足の付け根に向かってそれぞれ伸びてるあのひもは何?神経?腱?なんでこんなにひもがいっぱいあるの?」
「ほら、肘のところゴリッとやるとビリッとするじゃない」
「するする」
「あそこの肘の骨の上を神経が通ってるでしょう」
「ほんとだ、あれじゃぁビリッとくるよね。いやぁ割りと太いひもなんだね、神経ってさぁ」
人体の中には物凄い数のひもや袋がつまっているのです。
内臓にしたってそれはパズルのようで、なるほどそれぞれが最適の形で最適の場所に内臓同士を組み合わせるように置かれているから物凄くコンパクトに体内に納めることが出来る。
そのコンパクトに納まった内蔵を肋骨が包んでいました。
肋骨はきっと折れることで車のバンパーみたいにショックを吸収してそのショックが大切な内臓に届くことを和らげようとしているのでしょう。そういう仕組みを知ると肋骨が折れることをそれほど嘆くことは無いのかもしれないと思ってしまう。
そんなことがよく分かる。
しかし、「人体の不思議展」の異様なところは、よく分かるだけでは終われないところです。
それは目の前のその人体標本が模型などではなく本物なのだという事実が、常に見る者の心の中に強迫観念を巻き起こすところから来るのです。
確かにみんな見る目が変でした。
あの人も、あの人も、あの人も。
みんな日ごろより、ほんの少しだけ鼻の穴が広がっているように見えました。
ふと周囲に目をやると、椅子に座って休憩している人が目立ちました。
展示会場は歩き詰めですから疲れます。でもそれだけではない疲れがありました。
何かが混乱するのです。
とにかくいろんなことを考えてしまうのです。
目の前にある標本が作り物ではないのだという事実が常に切迫したものを突きつけてくるのです。
そして、つくりものでないから、あらゆる造詣に妥協や省略がまったく無い。
だから、人体を造詣した者の仕事量の膨大さ、その途方も無さに圧倒される。
そして見る者はどうしても思ってしまうのです。
「いったい誰が作ったんだ」と。
これって誰が作ったんだろう、と。
結局、思ってしまうのです。
「神様ですよ」。
誰かにそうあっさり言って欲しい気がしました。
神様だということにしてくれたらあっさりこの混乱が解消されそうな気がしたからです。
万能な者が世界も人も作ってくれたのなら思い悩む事はなくなるのですから。
でも、神様で無いなら。
いったい、誰が作ったのでしょう。
この途方も無い仕事量の果てにしかありえない人体という造形物を。
私は咄嗟にアホなことを思いつきました。
細胞以前の、もっともっと原始的なゴミみたいな何かが、ゴミみたいな何かに過ぎなかった何かが、ただただ「ありたい」という一念だけで、その切実な思いだけで、ここまでのものをこつこつと作り上げたのではないかしらと。
名も無い小さな小さなゴミのようなものたちが、寄り集まり寄り集まり、知恵を出し合い、気の遠くなるような根気の果てに作り上げた傑作、それが人体。
なんだ私は人体を見ながら、その仕事振りに、そんな素朴な者の実直さを感じたのです。
結局、人体というものはとてつもない物だと、
私は見ることによって、あっさりそう納得してしまった気でいます。
いやぁ、何が書きたかったんだろうオレは。
多分、ショックでうわ言を言っているのだろうと思うね。
「人体の不思議展」を見終えて外へ出るといつもどおりの平和な日常がありました。
見慣れた街中の賑わいの中に身を置いて、私はほっとしながらも、このぼくら人間が作り上げてきた社会と、先ほどまで熱心に見て回った何者かが作り上げてくれた人体の世界とが、なんだかとても、つながりの薄いものに思えてしまいました。
あれは、どういうことだったんでしょうか。
今でもよく分かりません。
でもね奥さん、見るって凄い事なんだね。
私はそう思いましたよ。
ま、また明日。
【日記本「水曜どうでしょう本日の日記」予約受付中!】
全国のローソン店頭ロッピー端末さんに打ち込みます商品番号は
057711(語呂募集!)
長年ホームページに書き綴られては消えていった日記の数々、それが今再び本となってよみがえる。今回はその第一巻ということで、2002年7月ベトナム縦断のロケに出発するところから始まり、10月の番組最終回を経て、翌2003年3月のDVD第一弾発売までの波乱万丈期の日記を収録したものであります。
【DVD全集第9弾予約受付中!】
「北海道212市町村カントリーサインの旅2」と「サイコロ4」の2本立て!
発売日は、9月26日(水)!
ネット通販の「HTBオンラインショップ」及び北海道内の「HTBグッズ販売店」にて同日より発売開始。
道外にお住まいの皆様方、ネット通販をご利用されない皆様方には、全国の「ローソン店頭ロッピー端末」にて予約受付。
予約開始日は6月1日(金)午前10時から!
また、DVD第8弾「激闘!西表島」の追加予約も同日より受付スタート。こちらの受け渡しは8月15日(水)となっております。
【「水曜どうでしょう最新作!放送決定!】
テレビ朝日さんで6月24日(日)深夜(お時間未定)第一夜?第四夜を一挙放送!
7月1日(日)同じく深夜に第五夜?第九夜まで一挙放送!
(関東ローカルでの特別編成となります、全国放送ではありません)
(17:31 嬉野)
2007年6月11日(月)
2007年6月11日(月)
嬉野です。
土日のYOSAKOIも無事終わりまして、先週と今週がつながっちゃったまま新しい週を迎えてしまっております、どうでしょう班とHTB一同でございますよ。
どうしたんでしょう、暑いんですよ札幌。
蒸しますねぇ本日は。
ところで今週の土曜日。
大泉さんが、あの「オーラの泉」にお出になられるとのことですよ。
私は、かなり昔から個人的に三輪さんのファンでありまして、渋谷のジャンジャンにね、美輪さんの一人芝居を観に行って大興奮したのが思い出されますねぇ。
もう25年くらい前の話ですよ。
あの頃は美輪さん、天草四郎の生まれ変わりだとおっしゃってましたねぇ。
美輪さんの一人芝居面白かったし、なによりあなた怖かった(笑)。
その美輪さんと、大泉さんが会って来たなんてねぇ、いったいどんなことを話されたのか楽しみでありますよ。
昨日ね、YOSAKOIで大泉さんには、桟敷席でお会いしたのでね、本人をつかまえて、ちょこっと聞きましたが、みなさんには内緒ですよ(笑)。
どうでしょう的には懐かしい、四国八十八ヵ所ロケの時の話もされたらしいですよ。
放送日はね、6月16日(土)。
夜7:57からの放送なのだそうでございますよ。
お見逃し無くね。
私も見ます。
じゃ、奥さんまた明日ね。
暑いね。
【DVD全集第9弾予約受付中!】
「北海道212市町村カントリーサインの旅2」と「サイコロ4」の2本立て!
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(18:35 嬉野)
2007年6月8日(金)
2007年6月8日(金)
嬉野です。
今週の火曜日の日記でね、「カントリーサインの旅2」に登場している10年前の大学生4人組に「連絡おくれ」と呼びかけたら、早くも翌日掲示板に連絡が入りまして、ただちに藤やんが本人と電話でお話しをしてね、でもってあっさり承諾を得たということでね、なんだか自分でもよくは分からんのですが爽やかだったね(笑)。
「いい?」
「いいですよ」
「あれからどうしてたの?」
「あれからいろいろですよ。楽しくやってます」
みたいなね、感じに受け取れたんですね。
電話での内容はこまごまとは知りませんけれどね。
10年経っても、4人とも「どうでしょう」を気にしてくれていたんだなと思うだけでもうれしかったですね。
4人の中に新たに加わった配偶者の方も含めてね(笑)。
他のサイトでも呼びかけてくれていたらしいしね。
いろんな人が、見つかれば好いなぁと思ってくれたんだね。
ことの成り行きを見守っていた皆さんもね、連絡が取れたということで、ほっとして、「好かった好かった」という、そんなこんなの書き込みが、一昨日も昨日も続々と掲示板に寄せられていたのも長閑で好かった。
誰しもが、よく分からないけど、なんか嬉しかったんだね。
そんな書き込みを読みながら「あぁ、なんか好いなぁ」と思った。
ひょんなことから、なんか、みんなできっと好い頂きものをしたんですな。そんな気がします。はい。
さぁ、この週末の札幌は、YOSAKOI一色です。
藤村先生も日曜日のファイナルに向けてDVDの編集もしながらの大忙しでございます。
じゃ、みんさん、また来週。
6月6日水曜日。藤村でございます。
昨日、日記にて「10年前、下川町のカントリーサインの前でお会いした4人の大学生を探しています」と、呼びかけたところ、早くも見つかりました。
4人のうち2人から直接掲示板に書き込みがありました。
その文面は、掲示板に載っています。
連絡先があったのですぐに電話をしました。4人のうちのひとり、大成町のカードを引き当てた女の子です。
女の子・・・も、今やお母さんとなり、「もう三十路です」と。
聞けば昨夜、日記を見た友だちから、「あなたのこと探してるよ!」と連絡があり、彼女がすぐに他の3人に連絡を回したそうです。
今でも、4人は仲良くやっていると。
あの時のこと、そして今の4人のこと、少し電話で聞きました。
10年ぶりの再会。
いや再会と言っても、電話で声を聞いただけです。
僕の目の前のモニターに映っているのは、10年前の彼女たちの姿。ハタチの大学生だった彼ら、彼女たちの姿です。
僕はDVDの編集をしながら、10年前の自分たちの姿を見て、「あぁ、こんなふうだったなぁ」と思い出し、「あれからいろいろあったなぁ」と、その後の10年間を思い起こします。
DVDは我々4人の記録。
でも、単純なことですが、画面の中の彼女たちにも、同じく10年という月日があった。
いや、みなさんにも同じく10年という月日があった。
当たり前のことですが、なんだかそれを強く思いました。
DVDは、我々だけの記録ではない。
今あらためて、連絡をくれた4人にお礼を言います。
どうもありがとう。
また、我々の知らないところで、あちこちのサイトでも呼びかけをしてくれていたそうで。どうもありがとう。
こうやって人間同士つながっていければ、何の問題もなくクリアできることなんでしょう。
おかげで、10年前の記録が完全な形で残せます。
よし。
本日はこれまで!
【DVD全集第9弾予約受付中!】
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(関東ローカルでの特別編成となります、全国放送ではありません)
(14:45 嬉野)
2007年6月5日(火)
2007年6月5日(火)
嬉野です。
トップのお寺の境内も初夏の装いになりました。
どうぞお参りください。
まぁ、携帯からは見れませんがね、悪しからずですよ。
さて、本日は緊急告知!
人探しであります。
それもただ今予約中のDVDに関する人探し!
「どうでしょう班は、この人たちを探しています!」
それはいったい誰か!
実は「212市町村カントリーサインの旅2」のロケで、
つまり1997年の晩秋にですね。
我々どうでしょう班は、ロケ中、「下川町」のカントリーサインの下で大学生四人組のどうでしょうファンと遭遇いたしました。
「私たちもカントリーサインの旅をしている最中だったんです!」
女の子は、我々との遭遇を大層喜んでくれておりました。
我々も、流れ上、彼らとの遭遇を撮影し、お話の中に入れ、作品を仕上げました。
しかしながら、DVDでは、彼らの顔を無断で出すわけにはいかない。ですから、モザイク処理でぼかすことになってしまいます。
でも、あれだけの「どうでしょうファン」でしたから、ひょっとしたら次のDVDで10年前の自分たちの顔を見れるのを楽しみにしてくれているのかもしれません。
ぼくらとしても、モザイク処理という不自然な絵には出来るだけしたくありません。
そこで、日記上で10年前のあの大学生4人に呼びかけることにしました。
1997年の晩秋。
「下川町」のカントリーサインの前で、ぼくらどうでしょう班と遭遇して喜んでくれた、女の子2人と男の子2人の4人組の元大学生のみなさん。
この日記を読んでいたら、掲示板に書き込みして連絡先を教えてください。
そして、彼らのことを知っているお友達のあなた!
すぐ彼ら彼女らに連絡してください。
よろしくお願いします。
いやぁ、この声は、本人達に届くのだろうか?
どうなるのでしょう。
あの時の大学生のみんなも、もう30歳くらいになっているんだろうね。
連絡待っています。
以上連絡事項終わり。
■「DVD西表島のシークレット、早く教えろ」とのリクエストを掲示板に数多くいただいております。
あらためてウラにちゃんと書きますが、本日も遅くまで日記の更新をお待ちいただいた皆様方へ、ごめんなさいの意味も込めて、いち早くお教えいたしましょう。
シークレットは全部で3つ。皆さんお困りなのは、「大泉編」でありましょう。教えます。
DISC2の「特典映像メニュー」
↓
《祭最終夜を見る》を選択する
↓
映像が再生されたら10秒以内に方向キーの「下(↓)」を押す
↓
するとシークレット映像「副音声収録風景・大泉洋編」が再生。
以上でございます。
さぁ、DVD出してきてやってみましょう。(藤村)
【DVD全集第9弾発売決定!】
「北海道212市町村カントリーサインの旅2」と「サイコロ4」の2本立て!
発売日は、9月26日(水)!
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道外にお住まいの皆様方、ネット通販をご利用されない皆様方には、全国の「ローソン店頭ロッピー端末」にて予約受付。
予約開始日は6月1日(金)午前10時から!
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7月1日(日)同じく深夜に第五夜?第九夜まで一挙放送!
(関東ローカルでの特別編成となります、全国放送ではありません)
(14:46 嬉野)
2007年6月4日(月)
2007年6月4日(月)
嬉野です。
先週の金曜日からDVDの予約が始まりまして、世間は、討ち入りという勇ましい季節と相成ったのでございまするが、
私ひとりは、四宮Pとの長かった道内出張も終えまして、あの晩、みなさんの激烈なる討ち入りを尻目に、藤村先生の編集も尻目に、ひっそりと札幌駅へと向かいまして、久ぶりで夜汽車に乗ったのでございます。
嬉野の子供の頃、いやぁそんなものはもう、40年近くも昔のことになるのですけれど、その頃嬉野が住んでおりました九州の佐賀から東京へ行くとなると誰もが夜汽車に乗って行く他に手段がございませんでした。
ですから上京する友や親戚を送るとなると、きまって夜でした。
日が暮れてから知り合いが駅のホームに集まり出す。
去り行く人を乗せた夜汽車は、みんなに見守られながら、やがて遠く闇の中へと消えていく。
別れは全て夜の中でとりおこなわれる…。
そんな感じだったんだと思います。
もちろん飛行機は既にありましたが、そんなものに乗れるのは一握りのお金持ちだけだという、庶民の経済感覚がございましたから、誰も飛行機なんかには乗らなかったようです。
国鉄の新幹線もまだ博多までは延びておりません頃でしたから、私の田舎から東京を目指すとなると国鉄の寝台特急「さくら」に乗るということになる。
私も小学6年の時に家族旅行で一度「さくら」に乗り込みまして、京都まで参りました。
しかし眠れんもんですよね、寝台車というのは。
ワクワクしちゃってね、もうドキドキしちゃって眠れんのです。
朝から夜が待ち遠しいのです。
夜といえば一日の終わりなのに、その日の夜ばかりは夜汽車に乗る夜なのです。だから夜を待つ。旅が始まるその夜を待つ。
夜を待って、日を過ごす。
あれは悪くないですね。
いつもは日が暮れてしまうことが嫌なのに、暮れて行くのが楽しみになる。一日が長く、充実していく。
そんな子供の頃の気分が、金曜日の私にもありました。
一日中、夜が来るのが待ち遠しかった。
札幌駅22:00発、青森行き急行「はまなす」という夜行列車がございます。
この列車にはカーペットカーという青函フェリーの2等船室みたいなカーペットが敷いてある車両がありましてね、そこだと横になって青森までいけるということでね、だいぶ安いものだから人気で、あっと言う間にきっぷが売り切れになってしまう。
で、しかたなく、かなり割高になりますが、私は寝台券を購入しまして、寝台車両に乗り込みました。
22:00少し前に札幌駅のホームにあがりましたら、急行「はまなす」はすでにホームに入っておりました。
車内はガラガラでしたが、「本日は、どの車両も満席となっております」という車内アナウンスが聞こえてまいりました。
私は、ベッドの上に荷物を置いて、することもこれといってなかったので、カーテンを閉め、寝巻きに着替え、そのまま横になってしまいました。
ほの暗い寝台に寝転んでいることが、なんかちょと、あまりにも久しぶりな感じだったので、少しばかり興奮してもおりました。
時折、耳元のスピーカーから車掌さんの声が聞こえてきます。
その車内アナウンスの声が、少し割れているのが、いかにも夜汽車の風情に思えました。
音質が悪いというのも、不思議なことですが味なのですね。
今の時代、音質が悪いということも、旅情ということでは選択肢のひとつに成り得る。
それほど、悪い音質というものは排除すべきではない重要な音質なのだなということを改めて認識しました。
変な時代ですね。
さて、夜10時。
急行「はまなす」は定刻どおりに走り出しました。
ぼくは、興奮しながらも、それでも知らぬ間に眠ってしまっていたようです。
ガタンという、車両の停止する振動に揺り起こされた耳に、遠くホームで流れるアナウンスが聞こえて来ました。
列車は「苫小牧駅」についたようでした。
時計を見ると夜の11時になっていました。
やがて、車両内にどやどやという足音が聞こえてきました。
誰かが大勢乗り込んで来たようです。
家族連れのようです。
言葉の端々から青森のお国なまりが聞き取れます。
私は、寝台に仰向けになったまま、小声で交わされる家族のやり取りを、カーテン越しに聞くとはなしに聞いていました。
「じいちゃん下に寝かせろ」
「じいちゃん、ここに寝ろ。下が楽だから」
「上にはオレが寝る」
「いいよ、アタシが上に寝るから」
「いんや、おめぇも下に寝ろ、オレが上に寝る」
「でも、上は男の人にはずいぶん狭いよ」
「なーんも、平気だ、おめぇあっちで下に寝ろ、楽だから、な」
家族皆の口から盛んにおじいさんを気遣う言葉が聞こえてきました。おじいさんだけでなく、お父さんもお母さんもそれぞれに相手のことを気遣っているようです。
夜汽車に乗って家族は青森に帰るのでしょうか。
事情は分かりませんでしたが、仲の好い家族だということは、言葉を通してよく分かりました。
私は、青森へ行って、いまだに東北をぐるぐるバイクで旅している妻と合流して、週末だけ、青森周遊をするために急行「はまなす」に乗り込んだのです。
しかし、妻が運転するバイクは、結局翌朝、午前10時30分。
私を乗せたタンデムのまま、青森県七戸町の「喜久屋商店」の前の四つ角で故障し、旅はあえなくそこで中断を余儀なくされてしまうのですが、そこで、本当にいろいろな方々に親切にしていただいたのです。
どうして青森の人はみんな、こんなに旅人に親切にしてくれるのだろう。というのが、今回の青森の旅での感想です。
日本一、人の好い県は「岩手県」だと、前にテレビで見ましたが、青森県人だって驚くほど人が好いのです。
テレビの報道番組では、ビックリするような事件のニュースばかりが連日紹介されますが、その同じ日本で、普通に受けてしまう初対面の人たちからの親切。
ショックなことが起きても、人の好さは萎えた心を救ってくれるようです。
他人の親身な優しさが、落ち込んだ身には一番の薬だということは、多分間違いないことだと思います。
人の好さというものは、いったいどんな環境で生まれ、育っていくものなのでしょう。そして、どんな環境で失われてしまうのか。
それにしても、岩手と言い青森と言い、北東北は好いです。
この夏が終わる前に、どこかで、まとまった時間を掛けて旅したいと思うのであります。元気なうちにね(笑)。
ぼくらは、番組以外でもあちこち旅することが多いから、
旅の先々で思いついたことを、いつかまとめてみなさんに紹介すべきなのじゃないかなと、この頃思うようになりました。
そんなことを藤村くんとも話します。
今の日本という国には、まだまだ好い物がいっぱい残っていて、悪いことより、好いことの方がきっと圧倒的に多いのだろうという、そんな予感がします。
そのことに、みなさんと一緒に気づきたいと、この頃強く意識するようになったのだろうと思うのです。
今日の札幌は、気温22度、快晴です。
遊びに来るなら、一年で一番好い時期ですよ、奥さん。
じゃ、また明日。
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以上でございます。
さぁ、DVD出してきてやってみましょう。(藤村)
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(15:41 嬉野)
2007年5月22日(火)
2007年5月22日(火)
嬉野です。
藤村先生が、本日もDVD編集でお急がしので、嬉野が気を利かせて本日も書いております。
えぇ今年は、なんですか、取材とか出張とかが多くてですね、会社にいないことが多いですね。
明日からもまたね、わたくし出張でね、今週来週は、わりと留守をいたしますので、みなさん、しばらくご機嫌よう、というごあいさつも兼ねさせていただきますよ。
あ!藤村先生はいます。
先生は編集室から出られませんから。
ですから出張にも出られません。
今度の出張は、四宮Pと二人です。
藤村先生のDVDの編集が終わるまでにと、いろいろと下準備を四宮Pとしておりますよ。
ですからHTBには、藤村先生お一人。
編集で、手一杯でしょうから、日記もなかなか更新できなくなるかもしれませんが、どうぞお許しを。
さて、さっき掲示板を覗きましたらね、神戸から秋田へ引越してこられた若奥様がね、馴れない土地で、そのぉ、なかなか自分の居場所なんかをまだ見つけられないのでしょうね、
「気持ちが、ふさいでます」みたいなことを書かれてましたが…。
分かりますなぁ。
子供の時も大人になっても、引越し、転校は、辛いよね。
でもね、「はやく一人前の東北人になれるように頑張りたいです」って書いておられましたね。その奥さん。
お腹にお子さんがおられるそうでよ。
妊娠5ヶ月とのことでした。
そしてね、「イライラしててもお腹の子供に好くないでしょうから」って、書いてもおられましたね。
引越し転校とかでね、なんとか頑張って、新しい環境に早く溶け込んでね、自分の居場所を作りたいなと思ってる人、この日記読んでる人の中にも、他に、いっぱいいるだろうなと思いますよ。
お気張りください。
私も11年前、36歳で札幌に越してきましたからね(笑)。
馴染むまでには、私の中では、いろいろあったように思います。
でも、今となってはね、多くの出会いに恵まれましてね、越して来て良かったと思ってますものね。
確かに人生、自分の望まなかった流れに呑まれる時もありますね。
でも、そういう時は、その流れに身を任せているとね、自分だけの判断では、おそらく辿りつかなかっただろう岸に流れ着いてね、自分の力だけでは見るはずも無かった風景を見るものですよ。
それはそれで、ラッキーなことだと思うの。
だからね、世の中は、何が幸いするか分からないということですよ。ほんとにね。
抗えない潮の流れに呑まれている間はね、抗うことなく流れのままに流されるのが案外好かったりします。
体力温存ですよ。
無駄にあがいて体力を消耗しては、おぼれて遭難するばかり。
環境が変わって「上手く行かないよ」と落ち込むような時はね、
「まぁこんなもんだ」と諦めてね、その状況から脱出しようとガムシャラに泳ぐのをやめたほうが好い。
そしてね、ぷかぷか、空を見上げて浮いてる方が好いようです。
落ち込むのを止めるのが一番得ですよ。
落ち込むのを止めるって、出来るもんですよ。
自分の思い描く自分でいたいのに、その自分でいられないから落ち込むんだと、ぼくは思います。
当分、自分の思い描く自分になんかはなれないなと。
不本意な状態だけど、この今の自分の状態のままでしばらく我慢しようと観念したら、多分落ち込むことも無くなると思いますよ。
そしたら、無駄な体力消耗もなくなるはずです。
流され始めたら、簡単には、その流れから抜けられません。
そんなもんです。
だから、そういう時は、流されるままに、ぷかぷか浮いれば好い。
そしたら、そのうち岸にたどり着く。
それは絶対そうですよ。
ですから、それまでは、空を見上げて呑気にしてた方が好い。
ぼくは、そう思ってます。
はい。
では、また。
【「水曜どうでしょう最新作!放送決定!】
KAB熊本朝日さん!5月4日から!
KSB瀬戸内海放送さん5月5日から!
ABA青森朝日さん5月8日から!
メ?テレさん5月11日から!
いずれも「どうでしょうレギュラー枠」での放送となります。
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(17:25 嬉野)