2012年12月20日(木)
嬉野でございます。
奥さん、あたしは、まだまだ九州におりますでございますよ。
九州の冬は雪もなく、そのぶん呑気でいいですなぁ。
凍った道で転ぶこともないです。
それに引き換えると札幌はえらいことになっているそうで。
毎日ドカドカと雪が降り積もって、かなわんのだそうです。
同じ冬とはいえ、ここまで違う。
ね〜。この風土の違いが、文化の違い、気性の違いを生んだって、奥さんなんの不思議もないことです。
環境が変われば正解だって変える。
毎年冬の苦労があれば、それは苦労だけれど仕方がないことと受け入れることに抵抗がなくなる。
一方、毎年冬の苦労がないところでは、苦労のないことがありがたいとは思いも寄らない。
どっちも当たり前のことです。
でも人類という者は、そうやって、環境に応じて自分を変えて行くことをする。
実に前向きに出来ている。
前向きは人類の特性ですな。
特性というものは大事にしないといけない。
今年の秋だったですかな。
さる人の導きで東大阪にある金型工場へ行きましたが、そこはもともと金型だけを作るのがご商売やったけど、この頃は自前の金型を使って自前で製品も作っておられる。
金型をセットした機械に、金属の板を置いて、その金属の板を金型で押し曲げ押し切るとあっという間に製品が出来ている。
言ってみれば金型は、その形の製品だけを大量に生産するためにだけ作られた魔法の構造物。
だって金型を使って製品を作るアクションはいたって簡単。
材料の金属板をセッティングしてレバーを押し下げるだけ。
そのツーアクションで、ガチャピンガチャピン言わせながら製品が生まれていく。実に単純です。
私は単純作業がとても好きで。
だからあの機械の前に立って、金属板をセッティングしてレバーを押し下げ、ガチャピン、ガチャピン言う音を聞きながら日を暮らすことにどことなく惹かれる。
あの仕事を全自動化することなど、おそらくたやすいのかもしれません。ですが、なんで全自動化しなければならないんだと、私なぞは思います。
いったい作業の全自動化って人類的になんの得があるんだろうねぇ奥さん。
人件費の削減って、究極のところ巡り巡って人類的に得があるんだろうか。
あぁやってレバーを押し下げて、ガチャピン、ガチャピン言わせながら製品が出来上がって行く時に、それでも人類は気分の良さを何かしら感じられるのですから。
気分の良さを感じるぎりぎりの所で自動化は止めとかなきゃならん。
そこに力点を置いてこれからの世界を眺めれば好い。あたしはそう思います。
金勘定の話だけで人類の幸福を突き詰めてはいけないでしょう。
自動化するなら人類が気分良く毎日を過ごせるぎりぎりを見極めて自動化する。
それ以上バカみたいにやみくもに自動化して人類が居なくても好い的な自動化に行き着くことになんの意味があるのかい、と言うだけの話です。
働きながら「気分が良いなぁ」と思える特性というものを人類は持ち合わせているのです。だったらそこはなくしちゃダメでしょう。
気分の良さは何かしら残しとくのが人類のためでしょうよ。
その人類としての気分の良さに重点を置いて今一度世界を眺め直すと、東大阪には、人類が憧れるところの工場が今でもゴロゴロあることに、実は気づいたりするのす。
コンピュータさんともうまいこと付き合って。それでいて、人類には気分の好い労働を残しておく。
これ以上、発展し続けなくていいから。横ばいで行けるように。
でも、それが無理なら徐々に衰退してでも好いから、人類としての気分の良さを感じながら、なんとなーく衰亡して行くってことでもいいのんじゃないかしら。
って、あたし以外の人は思わないだろうけど、あたしは思うのよ。
ということでね、本日も各自の持ち場で奮闘されますことを願いつつ、解散を宣言するものでありますよ。解散。
【藤やんうれしーの悩むだけ損!】
ネットサイト「電撃オンライン」にて月2回のペースで「お悩み相談」を執筆しております。
(12:03 嬉野)
2012年12月20日(木)
2012年12月14日(金)
2012年12月14日(金)
嬉野です。
北海道の皆さん。あした12/15午後3:30からぼくらが二年ぶりに作ったドラマ「幸せハッピー」が放送されますのでどうぞご覧ください。(^-^)
とても満足のいく出来上がりになったんですが、いかんせん分かりやすいお話ではないし、感動的に泣いちゃうようなお話でもないし(^-^)
でも、今はこんな気分の時代だなってどっかで思ってもらえる、そんなドラマじゃないかなって思ってます。
けっこうクスクス笑えたりもします(^-^)
それに北海道以外の地域でも放送が決まり、おかげさまでこれから順次見ていただけるようなことになっていますのでぜひ皆さんの感想をボソッと聞かせて欲しいです。
さて我々は只今、なぜか雪のない九州に来ております。朝まであった雪がここにはない。不思議な国JAPANであります!
それでは本日も各自の持ち場で奮闘されますよう。願い上げ奉ります!
解散。
↓以下、先日の藤村日記です。
12月12日水曜日。藤村でございます。
すわすわすわぁー!いよいよ12月15日土曜日から!
DVD第19弾「試験に出るどうでしょう石川県・富山県/四国八十八カ所?」の予約がスタートいたします。
今回の予約特典は、「試験に出る」より、生徒・安田さんが大泉校長にプレゼントした「輪島塗りの般若のループタイ」を見事に再現したフィギュアでございます。
どうですかぁー、正直そんなに欲しくないでしょう!
ねぇ、そのへんの微妙なラインをウチは狙ってくるんですよ。
予約した方全員に!もれなく「般若のループタイ」のフィギュアをプレゼントでございまぁーす。
いらねぇ!ったって、うるせぇ!もってけぇーと、いうことですよー。
さて!同じく今週土曜日12月15日!
午後3時30分より!
HTBスペシャルドラマ「幸せハッピー」が放送となります。
ますは北海道のみの放送となりますが、続々と全国各局でも放送が決定しております。詳しくは「幸せハッピー」のサイトをご覧ください。
国内外のドラマ賞を総なめにした「ミエルヒ」から3年。今回の「幸せハッピー」は、見る人にとって、いろんなとらえ方ができるドラマだと思います。
道内のみなさん、今週土曜日、まずはみなさんがご覧になって、感想をここの掲示板にお知らせください。読みたいです。
そして最後に!12月1日土曜日から北海道で放送がスタートしております「クロスバトル」。
私藤村とチームナックスリーダー森崎、そして韓国のイケメングループ「クロスジーン」という異色の取り合わせでお送りするバラエティー番組。
ウチのHTBオンデマンドでも、配信がスタートしたようでございます。最初こそみんな固いものの、4回目あたりからぐんぐんおもしろくなってまいります。全8回。どうぞ軽い気持ちで見てみてください。
では、藤村、嬉野。明日から九州に出張してまいります。
皆の衆、良い週末を!
【藤やんうれしーの悩むだけ損!】
ネットサイト「電撃オンライン」にて月2回のペースで「お悩み相談」を執筆しております。
(10:11 嬉野)
2012年12月10日(月)
2012年12月10日(月)
おはようございます奥さん。
大雪の札幌から本日も嬉野がご機嫌を伺わせていただきますよ。
さて、奥さん。
この前の大阪マラソンで、うちの藤村さんが42.195kmを完走なさいましてね。
しかも4時間半での完走という快挙でございますよ奥さん。
これには私も驚く、世間も驚くということでしたが。
で、あの人。
過日、ここの日記にね。
走った日のことをつぶさに書いてましたが。
あの方は見てきたことを、こと細かに面白可笑しく書くのが昔から上手な人だから、私も読んでて笑ったもんですが、あれ、人によってはね、なんですか読みながら感動して泣けちゃいましたという人がありましてね、その感想を意外に思ったもんでしたが、
「あんたほら、大阪マラソンの日記書いたじゃない」
「あぁ書いたねぇ」
「あれ面白かったんだけどさぁ、あれ読んで泣いたって人が何人かいてさぁ」
「えぇ?なんでさ」
「いや、だからさ。オレも最初は不審に思ったんだけどね。でも、あれって確かに笑っちゃうはなしなんだけど、でも同時にさ、あれ読んでるとね、あの日のランナーだったあんたが、あの日、苦しい思いの中、走りながら見た光景や、あんたの耳に入って来た沿道の人の声やら何やらがさ、あんたの人格を通すことによって、きみょうに澄んだ明るい幸福感に変換増幅されて読んでる側の目に見え耳に聞こえてくるようなとこあるんだよ」
「はぁ…」
「あの幸福感を読み取った時にはね、そらぁ人によっては笑い、人によっては、思いがけない幸福感に包まれて不意に涙が溢れて、自分も走りたいなぁっておもわせるってこともあるなってね、思ってね」
「ふーん」
「いや、オレもそんなに意識してはなかったけど。でも、確かにあんたは、そうね、花咲爺みたいなとこ、あんのかもしれないね」
「あ〜?花咲爺?」
「いや、こうさぁ、やたらこう、じじいは灰を世間に撒いてんだよ『枯木に花を咲かせましょう』って、わけの分かんないこと言ってさぁ。だから人によっちゃあ撒かれた灰がそのまま目に入って、痛えよ!ってこともあるんだけどさぁ、でも人によっちゃあこう、胸のここんとこの、枯れ木に花が咲くというね」
「あぁ」
「そういう、あんたはそう『幸せをもたらす男』なのかも知れないんだねぇ」
そんな話をしましたが。
言われた藤村さんも、花咲爺というイメージは、わりとお気に召したようでしたが(^-^)
まぁそういう話をしながらもね、いやオレってほんと気の利いたこと思いつくよなぁと、これまた思ったわけでしたがね(^-^)
いやいや、こういうことを書くと世間様に嫌がられられますが、ほんとそう思うのでね、書いてますよ奥さんねぇ。
それでは奥さん明日もまたおいでくださいまし。『う』と『ふ』でお待ちもうしておりますよ。
それでは本日も各自の持ち場で奮闘くださいませ!
では、また明日。
枯れ木に花を咲かせましょう!
↓以下、花咲爺日記でございます。
11月28日水曜日。藤村でございます。
25日の日曜日に「大阪マラソン」を走りました。
その前々日、23日は京都大学で嬉野先生と「水曜どうでしょう×京大 特別集中講義」と題した講演を3時間やりまして、その後は、我々を呼んでくれた京大生の玉木くんをはじめ、学生諸君としこたま飲んで、とてもいい夜を過ごしました。
翌24日は、朝8時に起きて、鴨川沿いをランニングしました。なんせ、12月15日に放送されるドラマ「幸せハッピー」の仕上げや、12月1日から北海道で放送がスタートする「クロスバトル」の日本語版の編集、そして3月に発売される次のどうでしょうDVDの編集もあって、1週間以上走ってなかったんです。せめてマラソン本番の前日ぐらいは走っておかないとダメだろうと。それで5キロぐらい走りました。
で、大阪に移動して、昼は道頓堀でお好み焼きとインディアンカレーを食い、思いっきり腹を下して、腹の中のものを全部出しまして、夜は鶴橋で焼肉を食い、ハイボールをしこたま飲んで、夜10時には熟睡!という万全の体勢でマラソン当日の朝を迎えました。
一方、同じくマラソンに出場する店長は、鶴橋で一緒に焼肉を食ったあと、ホテルに帰る前に、「うどんを食いたい」と言い出したらしく、嬉野先生はじめHTBから同行したスタッフと夜の町をさらに徘徊し、でもうどん屋が見つからず、結局喫茶店に入って無為な時間を過ごしたと聞いております。さらに店長は、マラソン当日の朝も暗いうちからのそのそと起きだして、5キロを走ったと聞いております。
「バカじゃないか?」と思いましたけれど、そんなことは知る由もありません。私は、店長が喫茶店でホットミルクを飲んでいるときも、早朝5キロ走っているときも、ぐっすり寝ていたわけですから。
我々は、大阪のとなり堺市にあるホテルに泊まっておりました。大阪市内のホテルが満室で取れなかったんですね。
25日朝7時。ホテルのロビーに降りますと、すでに店長は私を待ち構えておりました。そりゃそうです。店長は5時前には起きていたんですから。
そして我々は、嬉野先生をはじめとするスタッフに見送られ、電車に乗ってスタート地点である大阪城へと向かいました。
電車に乗っている間、店長が私にやたらと話しかけてきます。
「藤村さん、サングラス買いました?」
「買わねぇよそんなもん。だって帽子あるだろう」
「あー帽子だけじゃダメですよー目が焼けちゃいますよー」
「はぁ?」
「ほら!朝日がまぶしいでしょう!」
「そりゃ今はまぶしいよ、朝だもん」
「焼けちゃいますよー?」
そう言って、店長は自慢げにサングラスをかけて、朝日を眺めておりました。
私は内心、
(夏のオリンピックなら、そりゃ路面の照り返しとかもあるだろうよ。キューちゃんだってサングラスはしてたよ。でも12月間近のこの時期に、照り返しもねぇだろう。ていうか、こっちは市民マラソンの、それも初マラソンだぞ。キューちゃんを参考にしてどうする)
そう思っておりました。
さらに店長は話を続けます。
「藤村さん、腕の振りは大事ですよ」
「あぁ」
「いや、マラソンってね、腕の振り方でリズムをとったり、いろいろあるんですって」
「まぁあるだろうな」
「たとえば、こうやってね」
言いながら店長は、なんだか女の子のルンルン走りみたいに、胸の前でくるくると手を回します。
「いや、ほんと!こうやるといいんですって」
「まぁ、そうかもな」
私は内心、こう思ってました。
(確かにな、腕の振り方ひとつにしても、マラソンのノウハウみたいなものはたくさんあるだろうよ。でもな、そんなノウハウで頭を埋め尽くしてしまったら、頭ばっかり重くなって、それこそ身軽になれないだろう。おまえの頭の上にはすでに帽子とサングラスがのっかってんだからな)
と、そんなことを話しているうちに、我々は、電車を乗り間違えていることに気付きました。
「おい、これ違うぞ」
「え、そうなんですか?」
「ヤバイ、これ乗ってたら奈良に行っちまう」
我々、あやうく奈良に行くところでした。
スタート地点の大阪城公園に着いたのは、7時45分。
駅から続く長蛇の列に従って、待機場所に向かいます。
その間、何人かの人に声を掛けられました。
「どうでしょういつも見てます!がんばりましょう!」
「自分も北海道です!がんばりましょう!」
8時30分。我々のカテゴリーである「K」の待機場所に到着。
なんせ3万人が出場するマラソン大会ですから、全員がスタートラインに一緒に並ぶわけにはいきません。スタートラインの先頭に並べるのは、カテゴリー「A」の、2時間そこそこで走るプロフェッショナル。その後ろに3時間で走れる人、3時間半で走れる人と、走力によって待機場所がスタート地点から後ろに下がります。我々がいる「K」は、4時間半から5時間でゴールを目指す人たち。
9時ちょうど。大阪マラソンがスタート。プロフェッショナルが勢いよく走り出します。しかし、我々は後方の待機場所でまだ立ち止まったまま。徐々に長い列が動きだして、我々がスタートラインを切ったのは、9時17分ごろでした。
スタートラインを越えるのと同時に、腕時計のストップウオッチを押します。
店長と並んで走り出します。
「写真撮ってくれる人がいるから、オレらはなるべく沿道に近い端っこを走ろう」
スタート地点を少し過ぎたところで、早くも「藤やーん!」という声が聞こえます。
「なんと心強い。ちゃんと来てくれてるじゃないか」
「朝早くからすまんなぁ」
店長とふたりで手をあげてこたえます。
一方で、腕時計を見ながら、1キロごとのラップタイムを確認します。
1キロあたり6分40秒台。
目標タイムは4時間30分で、なんなら4時間を切りたい。となれば、1キロを5分台で走りたいところ。
「ダメだ。これ遅いぞ」
「そうですね」
力強く店長も答えます。しかしながら、ランナーの行列はダンゴ状態。行くに行けない状況が続きます。
5キロ地点を越えたあたりから、少しずつ行列に隙間が見えてきたので、一気にペースを上げて、前のランナーをどんどん追い抜いていきます。なるべく沿道に近いところを走り、「藤やん!」の声を聞けば、そちらを向く。
大阪の繁華街、御堂筋に入る。沿道の人たちの数が一気に増える。その中で、系列局の岩手朝日の顔見知りの男が、iPadを抱えて動画を撮りながら「藤村さーん!」と声を張り上げて沿道を並走してくる。同じように携帯を向けながら並走する藩士諸君もあちこちに。
「おう!」と答えながらも、ランナーの間をぬって、前へ前へ。
御堂筋を右に折れて、土佐堀通へ。10キロ地点。ラップタイムは1時間ジャスト。
「よし、4時間半のペースに追いついたな。いけるぞこれは」
スピードに乗った足並みは快調そのもの。後ろを見ると、店長の姿はいつのまにか見えなくなっていました。
「調子いいぞ。これは4時間切れるかも」
片町の折り返し地点を過ぎ、再び御堂筋へ。その間、とにかく前のランナーをどんどん追い抜く。
京セラドームの20キロ地点の手前で、嬉野先生をはじめとするHTB軍団の姿を発見。
「藤やーん!」
「はーい!がんばっておりまーす!」
余裕で手を振って、さらに前へ前へ。
京セラドームを過ぎて、再び折り返し。そして20キロ地点。
ラップタイムは、1時間53分。このラップタイムは、あとでわかったことだけど、4時間を切ったコブクロの小渕さんより、4時間8分で走ったNMB48の女の子よりも早い。つまり10キロ以降は、1キロ5分の超ハイペースで飛ばしていたわけです。
20キロを1時間53分。これはしかし、練習のときには出していたタイムですから、別に驚くようなことじゃない。でも、致命的なのは、私は、今まで20キロ以上を走ったことがないということです。ここから先は、未知の世界なわけです。
そして、未知の世界、20キロを過ぎた直後、驚きました。
体が急におかしくなったんです。ふくらはぎがガチガチになって、めまいがしたんです。
「やばい。倒れる」
ほんとにそう思いました。まわりの風景が白くなる。ペースがぐんと落ちて、ついさっきまでは遅いと思っていたランナーたちに、どんどん追い抜かれていく。
「ダメだ。これ絶対にダメだ。完走は無理だ。倒れる。どこで地下鉄に乗ろうか」
もう完走はあきらめようと半分思ってました。沿道の「藤やーん!」の声援も、ほとんど耳に入りません。でもまだ歩いてはいませんでした。でも、歩いているのとさして変わらないペース。1キロのラップは7分を大きく越えていました。
「ダメだ。ダメだ。もうほんとにダメだ」
そう思っていたところに、給水所が見えました。
私はここまで給水をまったくしていませんでした。
フラフラと給水所にたどりつき、スポーツドリンクを口に含む。そしたら、なんでしょうか、めまいが一瞬のうちに消えて、一気に生き返ったような心地になったんです。
そういえば、マラソンのノウハウを頭に詰め込んだ店長が言ってました。
「藤村さん、給水所ではちゃんと休憩したほうがいいんですって」と。
それで、ようやく走るのをやめて、歩きながら、スポーツドリンクをガブガブと飲みました。2杯飲みました。生き返るんですね、そしたら。
で、またゆっくりと走り出してみる。足はまだまだ言うことをきかないけれど、もう少しは行けそうな気がしてくる。
「よし、次の給水所までがんばろう。そこでまた休憩しよう」
そう思って走りました。
次の給水所には、バナナやらお菓子やらがありました。
そういえば、店長が言ってました。
「給水だけはなくて、ちゃんと食べてエネルギーを補給しないとダメなんですって。あと、途中途中で屈伸とかもやったほうがいいですよ」
それで、バナナもお菓子も全部食べました。そして、端っこで立ち止まって、屈伸運動をしました。
するともうなんでしょうか、体がシャキッと元に戻っていくんです。
「店長、バカにしてすまんかった。おまえの言う通りだった」
私は猛烈に反省し、それ以降のすべての給水場に立ち寄り、そこにある食べ物はすべて食べることにしました。
バナナもチョコレートもキュウリもトマトもおいなりさんも桜餅もわらび餅も。まるでホテルのバイキングのように片っ端から。そして食い終わると屈伸運動。
それを繰り返して30キロ地点。ラップタイムは、3時間4分。20キロからの10キロは、1時間10分かかったことになります。もう4時間は切れません。しかし、まだ目標の4時間半は射程距離内。
「よし、あと10キロちょっと。これは毎朝走ってる距離じゃないか。もう楽勝じゃないか。そのうえ、途中でメシも食えるんだ。スポーツドリンクも飲み放題。そして、あちこちから声も聞こえる。心強いじゃないか」
「アメちゃん」と書かれたところでは、アメをもらい、それをなめながら走る。
「アメとか、口に入れて走るのがいいんですって」
言ってた言ってた。店長が言ってた。確かにアメはすごくいい。
30キロ以降、ペースはもう前半のようには戻らなかったけれど、しかし、給水、給食、屈伸を繰り返して、調子は上がりました。
もう「地下鉄に乗る」という選択肢は消えました。
あと5キロの地点で、南港大橋という橋を渡ります。登りです。最後の難関です。その入り口に、どうでしょうフィギュアを作っている「ユニオンクリエイティブ」の連中が陣取っておりました。
「藤村さーん!がんばれーッ!」
彼らもかなり熱くなっているんでしょう。こっちが引くぐらいの大声を張り上げております。「ありがたい」と思いつつも、こっちは「次の給水所にはどんな食い物があるんだろう?」と、そっちの方が気になってしょうがない。
時計を見れば、4時間30分を切れそうなタイムです。
しかし、その時の私にとっては、ビシッと給水所に立ち寄り、そこにあるものを全種類飲み食いする、そうしなければ完走できないという思いがありました。それがあたかもルールのような、「早食い完食マラソン」のような様相を呈しておりましたので、タイムはもう二の次でありました。
最後の給水所でもキッチリとお菓子を頂戴し、完食してゴールを目指します。
あらかた腹は一杯です。
ラスト1キロぐらいになると、「藤やんがんばれ!」の声があちこちから飛んできます。途中で何度か見た顔が並んでいます。彼らも同じく、42.195キロを移動して、ゴール地点に集結していたのです。
「藤やーん!」
たぶん、ゴール地点で、一番声を掛けられていたのは私ではないでしょうか。そのぐらい、ひっきりなしに声が掛かるんです。
手を振って、気合いを入れて、ラストスパートをかけます。
「藤やーん!」
「ありがとう!」
ゴール。タイムは、4時間31分26秒。
目標の4時間半には少しだけ遅れましたが、悔いはありません。悔いがあるとすれば、「わらび餅をもう2、3個食いたかった」ということだけでした。
ゴールすると、嬉野先生たちと大阪マラソンの実行委員の人たちが待ち構えておりました。彼らも熱いどうでしょうファンだそうです。関西にもいつのまにか、どうでしょう好きがこんなに増えていたんですね。
初マラソンの感想は、
「案外、マラソンって、腹一杯になるんだな」
ということでした。
でもその後、着替えをして、「うまいもん市」とかいうイベント会場で、富山のラーメン店の行列に並んでラーメンを食い、ビールも2杯飲みました。
「もうね、十分満足しました。あとはもう、早くホテルに戻ってゆっくり休みたい」
そう思っておりましたが、店長がまだゴールしていません。
「もういいんじゃねぇの?あいつは」
そう申しましたら、全員から猛反発をくらい、待つことにしました。
店長がゴールしたのは、私の2時間後、6時間を越えたときでした。
フラッフラの店長の姿を沿道で見届けて、一足先にホテルへと戻りました。
途中、嬉野先生からメールがありました。
「現在、スタッフ全員で店長を護送中。まだ時間がかかりそうです」と。
店長はもう、足腰が立たず、両脇を抱えられて帰りの電車に運び込まれたそうです。
その夜、メシを食いながら店長の話を聞きました。彼はしきりに「腕が痛い」と申しておりました。彼は、例の「ルンルン走り」を実践し、その結果、腕を振り過ぎて、痛めたそうであります。
「でも店長、おまえが言ってた通り、いろんなもの食べたら元気が出たわ。トマトなんて最高にうまかったもんな」
「あ、そうですか。ぼくが行ったときにはもうトマトなんてなかったです」
「え?そうなの?」
「ないです。もう売り切れでした。それ見て、心が完全に折れました」
「わらび餅は?」
「ないです」
「あ、タイムが遅いと食い物もどんどん売り切れちゃうんだ」
「ぼくが行ったときに残っていたのは、バナナと紙コップだけです」
店長は、さびしげに笑い、そして30分もしないうちにテーブルに突っ伏して寝てしまいました。そしてまたスタッフに護送されてホテルに帰っていきました。
大阪ヒゲマラソンは、こうして終わりました。
沿道に駆けつけてくれたみなさま、ありがとうございました。
みなさまから投稿していただいた写真は、嬉野先生がまとめて、掲載する予定であります。
「ヒゲのおっさん二人がフルマラソンに挑んだらどうなるか?」という人体実験の様子を、沿道に陣取ったみなさまから送られてくる写真からひもといていくという今回の企画。
一体どんな表情が写し出されているのか。興味深いところであります。
藤やんうれしーの悩むだけ損!】
ネットサイト「電撃オンライン」にて月2回のペースで「お悩み相談」を執筆しております。
(10:01 嬉野)
2012年12月4日(火)
2012年12月4日(火)
嬉野です。
奥さん。樋口了一さんが風のように現れて不意に小樽で
コンサートをやりますよ。
現れる場所は市民劇場ヲタル座です。
現れる日時は今週の土曜日12月8日の午後3時30分です。
すなはち開場15:30 開演16:00です!
ご予約は、music shop 音楽処ホームページ http://www.ondoko.jp に
メールしましょう(^-^)/
お電話ならば011-221-0106まで!
11/17〜music shop音楽処 店頭にても発売中でありますよ。
夕方の4時から始まるコンサートなら札幌の人も帰りが
遅くならずに済みますもん(^-^)/
雪の降り積もった冬の小樽にあなた一人で出かけるもよし。
思いがけない人を誘って二人で行くもよしです。
そうして樋口了一さんに会いに行ってみてください。
題しまして「了〜はじまりの風〜in小樽ヲタル座」です。
小樽市民劇場ヲタル座は、ウイングベイ小樽3階5番街
( JR小樽築港駅直結です!)
さ、とういうことでね、大阪マラソンの報告写真紙芝居も
樋口さんのコンサートと同じ8日を予定しておりましたが
どうなりますことやら。
おそらく間に合いません。
あくまでも(予定)でございます。あいすんません。
大阪の報告はしばらく待て!
それでは諸氏!
本日も各自の持ち場で奮闘願います!
そして8日土曜日には樋口了一さんに会いに小樽へ行こう!
では解散です!
↓(以下藤村日記に続く)
11月28日水曜日。藤村でございます。
25日の日曜日に「大阪マラソン」を走りました。
その前々日、23日は京都大学で嬉野先生と「水曜どうでしょう×京大 特別集中講義」と題した講演を3時間やりまして、その後は、我々を呼んでくれた京大生の玉木くんをはじめ、学生諸君としこたま飲んで、とてもいい夜を過ごしました。
翌24日は、朝8時に起きて、鴨川沿いをランニングしました。なんせ、12月15日に放送されるドラマ「幸せハッピー」の仕上げや、12月1日から北海道で放送がスタートする「クロスバトル」の日本語版の編集、そして3月に発売される次のどうでしょうDVDの編集もあって、1週間以上走ってなかったんです。せめてマラソン本番の前日ぐらいは走っておかないとダメだろうと。それで5キロぐらい走りました。
で、大阪に移動して、昼は道頓堀でお好み焼きとインディアンカレーを食い、思いっきり腹を下して、腹の中のものを全部出しまして、夜は鶴橋で焼肉を食い、ハイボールをしこたま飲んで、夜10時には熟睡!という万全の体勢でマラソン当日の朝を迎えました。
一方、同じくマラソンに出場する店長は、鶴橋で一緒に焼肉を食ったあと、ホテルに帰る前に、「うどんを食いたい」と言い出したらしく、嬉野先生はじめHTBから同行したスタッフと夜の町をさらに徘徊し、でもうどん屋が見つからず、結局喫茶店に入って無為な時間を過ごしたと聞いております。さらに店長は、マラソン当日の朝も暗いうちからのそのそと起きだして、5キロを走ったと聞いております。
「バカじゃないか?」と思いましたけれど、そんなことは知る由もありません。私は、店長が喫茶店でホットミルクを飲んでいるときも、早朝5キロ走っているときも、ぐっすり寝ていたわけですから。
我々は、大阪のとなり堺市にあるホテルに泊まっておりました。大阪市内のホテルが満室で取れなかったんですね。
25日朝7時。ホテルのロビーに降りますと、すでに店長は私を待ち構えておりました。そりゃそうです。店長は5時前には起きていたんですから。
そして我々は、嬉野先生をはじめとするスタッフに見送られ、電車に乗ってスタート地点である大阪城へと向かいました。
電車に乗っている間、店長が私にやたらと話しかけてきます。
「藤村さん、サングラス買いました?」
「買わねぇよそんなもん。だって帽子あるだろう」
「あー帽子だけじゃダメですよー目が焼けちゃいますよー」
「はぁ?」
「ほら!朝日がまぶしいでしょう!」
「そりゃ今はまぶしいよ、朝だもん」
「焼けちゃいますよー?」
そう言って、店長は自慢げにサングラスをかけて、朝日を眺めておりました。
私は内心、
(夏のオリンピックなら、そりゃ路面の照り返しとかもあるだろうよ。キューちゃんだってサングラスはしてたよ。でも12月間近のこの時期に、照り返しもねぇだろう。ていうか、こっちは市民マラソンの、それも初マラソンだぞ。キューちゃんを参考にしてどうする)
そう思っておりました。
さらに店長は話を続けます。
「藤村さん、腕の振りは大事ですよ」
「あぁ」
「いや、マラソンってね、腕の振り方でリズムをとったり、いろいろあるんですって」
「まぁあるだろうな」
「たとえば、こうやってね」
言いながら店長は、なんだか女の子のルンルン走りみたいに、胸の前でくるくると手を回します。
「いや、ほんと!こうやるといいんですって」
「まぁ、そうかもな」
私は内心、こう思ってました。
(確かにな、腕の振り方ひとつにしても、マラソンのノウハウみたいなものはたくさんあるだろうよ。でもな、そんなノウハウで頭を埋め尽くしてしまったら、頭ばっかり重くなって、それこそ身軽になれないだろう。おまえの頭の上にはすでに帽子とサングラスがのっかってんだからな)
と、そんなことを話しているうちに、我々は、電車を乗り間違えていることに気付きました。
「おい、これ違うぞ」
「え、そうなんですか?」
「ヤバイ、これ乗ってたら奈良に行っちまう」
我々、あやうく奈良に行くところでした。
スタート地点の大阪城公園に着いたのは、7時45分。
駅から続く長蛇の列に従って、待機場所に向かいます。
その間、何人かの人に声を掛けられました。
「どうでしょういつも見てます!がんばりましょう!」
「自分も北海道です!がんばりましょう!」
8時30分。我々のカテゴリーである「K」の待機場所に到着。
なんせ3万人が出場するマラソン大会ですから、全員がスタートラインに一緒に並ぶわけにはいきません。スタートラインの先頭に並べるのは、カテゴリー「A」の、2時間そこそこで走るプロフェッショナル。その後ろに3時間で走れる人、3時間半で走れる人と、走力によって待機場所がスタート地点から後ろに下がります。我々がいる「K」は、4時間半から5時間でゴールを目指す人たち。
9時ちょうど。大阪マラソンがスタート。プロフェッショナルが勢いよく走り出します。しかし、我々は後方の待機場所でまだ立ち止まったまま。徐々に長い列が動きだして、我々がスタートラインを切ったのは、9時17分ごろでした。
スタートラインを越えるのと同時に、腕時計のストップウオッチを押します。
店長と並んで走り出します。
「写真撮ってくれる人がいるから、オレらはなるべく沿道に近い端っこを走ろう」
スタート地点を少し過ぎたところで、早くも「藤やーん!」という声が聞こえます。
「なんと心強い。ちゃんと来てくれてるじゃないか」
「朝早くからすまんなぁ」
店長とふたりで手をあげてこたえます。
一方で、腕時計を見ながら、1キロごとのラップタイムを確認します。
1キロあたり6分40秒台。
目標タイムは4時間30分で、なんなら4時間を切りたい。となれば、1キロを5分台で走りたいところ。
「ダメだ。これ遅いぞ」
「そうですね」
力強く店長も答えます。しかしながら、ランナーの行列はダンゴ状態。行くに行けない状況が続きます。
5キロ地点を越えたあたりから、少しずつ行列に隙間が見えてきたので、一気にペースを上げて、前のランナーをどんどん追い抜いていきます。なるべく沿道に近いところを走り、「藤やん!」の声を聞けば、そちらを向く。
大阪の繁華街、御堂筋に入る。沿道の人たちの数が一気に増える。その中で、系列局の岩手朝日の顔見知りの男が、iPadを抱えて動画を撮りながら「藤村さーん!」と声を張り上げて沿道を並走してくる。同じように携帯を向けながら並走する藩士諸君もあちこちに。
「おう!」と答えながらも、ランナーの間をぬって、前へ前へ。
御堂筋を右に折れて、土佐堀通へ。10キロ地点。ラップタイムは1時間ジャスト。
「よし、4時間半のペースに追いついたな。いけるぞこれは」
スピードに乗った足並みは快調そのもの。後ろを見ると、店長の姿はいつのまにか見えなくなっていました。
「調子いいぞ。これは4時間切れるかも」
片町の折り返し地点を過ぎ、再び御堂筋へ。その間、とにかく前のランナーをどんどん追い抜く。
京セラドームの20キロ地点の手前で、嬉野先生をはじめとするHTB軍団の姿を発見。
「藤やーん!」
「はーい!がんばっておりまーす!」
余裕で手を振って、さらに前へ前へ。
京セラドームを過ぎて、再び折り返し。そして20キロ地点。
ラップタイムは、1時間53分。このラップタイムは、あとでわかったことだけど、4時間を切ったコブクロの小渕さんより、4時間8分で走ったNMB48の女の子よりも早い。つまり10キロ以降は、1キロ5分の超ハイペースで飛ばしていたわけです。
20キロを1時間53分。これはしかし、練習のときには出していたタイムですから、別に驚くようなことじゃない。でも、致命的なのは、私は、今まで20キロ以上を走ったことがないということです。ここから先は、未知の世界なわけです。
そして、未知の世界、20キロを過ぎた直後、驚きました。
体が急におかしくなったんです。ふくらはぎがガチガチになって、めまいがしたんです。
「やばい。倒れる」
ほんとにそう思いました。まわりの風景が白くなる。ペースがぐんと落ちて、ついさっきまでは遅いと思っていたランナーたちに、どんどん追い抜かれていく。
「ダメだ。これ絶対にダメだ。完走は無理だ。倒れる。どこで地下鉄に乗ろうか」
もう完走はあきらめようと半分思ってました。沿道の「藤やーん!」の声援も、ほとんど耳に入りません。でもまだ歩いてはいませんでした。でも、歩いているのとさして変わらないペース。1キロのラップは7分を大きく越えていました。
「ダメだ。ダメだ。もうほんとにダメだ」
そう思っていたところに、給水所が見えました。
私はここまで給水をまったくしていませんでした。
フラフラと給水所にたどりつき、スポーツドリンクを口に含む。そしたら、なんでしょうか、めまいが一瞬のうちに消えて、一気に生き返ったような心地になったんです。
そういえば、マラソンのノウハウを頭に詰め込んだ店長が言ってました。
「藤村さん、給水所ではちゃんと休憩したほうがいいんですって」と。
それで、ようやく走るのをやめて、歩きながら、スポーツドリンクをガブガブと飲みました。2杯飲みました。生き返るんですね、そしたら。
で、またゆっくりと走り出してみる。足はまだまだ言うことをきかないけれど、もう少しは行けそうな気がしてくる。
「よし、次の給水所までがんばろう。そこでまた休憩しよう」
そう思って走りました。
次の給水所には、バナナやらお菓子やらがありました。
そういえば、店長が言ってました。
「給水だけはなくて、ちゃんと食べてエネルギーを補給しないとダメなんですって。あと、途中途中で屈伸とかもやったほうがいいですよ」
それで、バナナもお菓子も全部食べました。そして、端っこで立ち止まって、屈伸運動をしました。
するともうなんでしょうか、体がシャキッと元に戻っていくんです。
「店長、バカにしてすまんかった。おまえの言う通りだった」
私は猛烈に反省し、それ以降のすべての給水場に立ち寄り、そこにある食べ物はすべて食べることにしました。
バナナもチョコレートもキュウリもトマトもおいなりさんも桜餅もわらび餅も。まるでホテルのバイキングのように片っ端から。そして食い終わると屈伸運動。
それを繰り返して30キロ地点。ラップタイムは、3時間4分。20キロからの10キロは、1時間10分かかったことになります。もう4時間は切れません。しかし、まだ目標の4時間半は射程距離内。
「よし、あと10キロちょっと。これは毎朝走ってる距離じゃないか。もう楽勝じゃないか。そのうえ、途中でメシも食えるんだ。スポーツドリンクも飲み放題。そして、あちこちから声も聞こえる。心強いじゃないか」
「アメちゃん」と書かれたところでは、アメをもらい、それをなめながら走る。
「アメとか、口に入れて走るのがいいんですって」
言ってた言ってた。店長が言ってた。確かにアメはすごくいい。
30キロ以降、ペースはもう前半のようには戻らなかったけれど、しかし、給水、給食、屈伸を繰り返して、調子は上がりました。
もう「地下鉄に乗る」という選択肢は消えました。
あと5キロの地点で、南港大橋という橋を渡ります。登りです。最後の難関です。その入り口に、どうでしょうフィギュアを作っている「ユニオンクリエイティブ」の連中が陣取っておりました。
「藤村さーん!がんばれーッ!」
彼らもかなり熱くなっているんでしょう。こっちが引くぐらいの大声を張り上げております。「ありがたい」と思いつつも、こっちは「次の給水所にはどんな食い物があるんだろう?」と、そっちの方が気になってしょうがない。
時計を見れば、4時間30分を切れそうなタイムです。
しかし、その時の私にとっては、ビシッと給水所に立ち寄り、そこにあるものを全種類飲み食いする、そうしなければ完走できないという思いがありました。それがあたかもルールのような、「早食い完食マラソン」のような様相を呈しておりましたので、タイムはもう二の次でありました。
最後の給水所でもキッチリとお菓子を頂戴し、完食してゴールを目指します。
あらかた腹は一杯です。
ラスト1キロぐらいになると、「藤やんがんばれ!」の声があちこちから飛んできます。途中で何度か見た顔が並んでいます。彼らも同じく、42.195キロを移動して、ゴール地点に集結していたのです。
「藤やーん!」
たぶん、ゴール地点で、一番声を掛けられていたのは私ではないでしょうか。そのぐらい、ひっきりなしに声が掛かるんです。
手を振って、気合いを入れて、ラストスパートをかけます。
「藤やーん!」
「ありがとう!」
ゴール。タイムは、4時間31分26秒。
目標の4時間半には少しだけ遅れましたが、悔いはありません。悔いがあるとすれば、「わらび餅をもう2、3個食いたかった」ということだけでした。
ゴールすると、嬉野先生たちと大阪マラソンの実行委員の人たちが待ち構えておりました。彼らも熱いどうでしょうファンだそうです。関西にもいつのまにか、どうでしょう好きがこんなに増えていたんですね。
初マラソンの感想は、
「案外、マラソンって、腹一杯になるんだな」
ということでした。
でもその後、着替えをして、「うまいもん市」とかいうイベント会場で、富山のラーメン店の行列に並んでラーメンを食い、ビールも2杯飲みました。
「もうね、十分満足しました。あとはもう、早くホテルに戻ってゆっくり休みたい」
そう思っておりましたが、店長がまだゴールしていません。
「もういいんじゃねぇの?あいつは」
そう申しましたら、全員から猛反発をくらい、待つことにしました。
店長がゴールしたのは、私の2時間後、6時間を越えたときでした。
フラッフラの店長の姿を沿道で見届けて、一足先にホテルへと戻りました。
途中、嬉野先生からメールがありました。
「現在、スタッフ全員で店長を護送中。まだ時間がかかりそうです」と。
店長はもう、足腰が立たず、両脇を抱えられて帰りの電車に運び込まれたそうです。
その夜、メシを食いながら店長の話を聞きました。彼はしきりに「腕が痛い」と申しておりました。彼は、例の「ルンルン走り」を実践し、その結果、腕を振り過ぎて、痛めたそうであります。
「でも店長、おまえが言ってた通り、いろんなもの食べたら元気が出たわ。トマトなんて最高にうまかったもんな」
「あ、そうですか。ぼくが行ったときにはもうトマトなんてなかったです」
「え?そうなの?」
「ないです。もう売り切れでした。それ見て、心が完全に折れました」
「わらび餅は?」
「ないです」
「あ、タイムが遅いと食い物もどんどん売り切れちゃうんだ」
「ぼくが行ったときに残っていたのは、バナナと紙コップだけです」
店長は、さびしげに笑い、そして30分もしないうちにテーブルに突っ伏して寝てしまいました。そしてまたスタッフに護送されてホテルに帰っていきました。
大阪ヒゲマラソンは、こうして終わりました。
沿道に駆けつけてくれたみなさま、ありがとうございました。
みなさまから投稿していただいた写真は、嬉野先生がまとめて、掲載する予定であります。
「ヒゲのおっさん二人がフルマラソンに挑んだらどうなるか?」という人体実験の様子を、沿道に陣取ったみなさまから送られてくる写真からひもといていくという今回の企画。
一体どんな表情が写し出されているのか。興味深いところであります。
藤やんうれしーの悩むだけ損!】
ネットサイト「電撃オンライン」にて月2回のペースで「お悩み相談」を執筆しております。
(18:01 嬉野)
2012年11月28日(水)
2012年11月28日(水)
嬉野です。
大阪マラソン!藤村石坂両名共に完走!
いやぁこれには驚きました。
あの人たちタフですねぇ〜。
なかでも藤村さんは、5時間を切るタイムで早い早い。
おかげでこちら応援団は地下鉄での追っかけで丸一日座れない!
体力が若干おばちゃんぎみな藤村次女が、
そうとう疲れて不機嫌顔になるほどでありました!
あの方、やはり只者では無かった!
病的な楽天家でもなかったですねぇ!
そして、店長さんにいたっては、
マラソン当日の朝、なんと4時起きして、
そしてなぜか5キロも走ってしまうという
どうにも意味の分からんハードなウォーミングアップで
大会に挑むということでございましたよ。
大阪市内、まれにみる晴天でまさにマラソン日和!
当日の激走写メもたくさんいただいております!
ありがたい!
確かにどれも似たような画になっておりますが、
そんなのは当然でございます!
時間の隙間を縫って大阪マラソン激走の記録を
後日(未定)当HPにアップいたしますのでお楽しみに!
それでは諸氏!本日も各自の持ち場で奮闘願います!
藤やんうれしーの悩むだけ損!】
ネットサイト「電撃オンライン」にて月2回のペースで「お悩み相談」を執筆しております。
(13:16 嬉野)
2012年11月21日(水)
2012年11月21日(水)
嬉野です。
さて、大阪マラソンが近づいてまいりまして。
えぇ、そのついでと言ってはなんですが、
せっかくなのでこれに出張も付け加えましたので、
明日から不在でございます。
で、週明けの26日までこちらに参ることが出来ませんので。
本日みなさまへご挨拶にと、いうことでね、
のこのこと顔を出しましたでございますよ。
あさって23日は、京都大学の学園祭のイベントにも
藤村さんと二人呼んでいただきましたのでね、
そちらにも顔を出しますので、
京都のみなさんどうぞよろしくね。
ということでね。
大阪マラソン。
マラソンはねぇ、
「テレビ中継で見たいなぁ」と思うの。
だって誰かがあの二人を中継でもしてくれない限り、
現場へ行っても人だかりでね、
あの二人の勇姿をこの目で見ることは叶わないだろうなぁ、
と思いますよ。
ですからなんとかね、
トップ集団に交じって走ってくれないだろうか?あの二人。
そしたらテレビで勇姿を見れる!
いやぁ、それなんとかやってくれるんじゃないだろうか。
2時間半くらいでゴールしてくれるんじゃないだろうか?
不可能を可能にしてくれるような気がしますがね。
まったくもって自分の都合で考えすぎるのでしょうか…ねぇ。
せめて当日、晴れてくれれば好いなぁと思います。
氷雨の中を薄着で走るのは厳し過ぎます。
「雨降ったら中止かなぁ…」
藤村さんに言いましたらね、
「何言ってるの!やるに決まってるでしょ、雨くらい!」
と、彼の人は言っておりましたよ。
今を去る8年前にね、藤村さんはマレーシアのブンブンクンバンに大泉洋さんをだまして連れて行ってね、「誕生日をジャングルで迎えさせてやった!」と大爆笑しておりましたが、
大爆笑も束の間、夜にはご本人が「板張りのベッドで寝られないんだよぉ」と哀れを装う騒ぎようで、他の三人の参加者には気の毒に思えてしまうほどでねぇ。
そういうところのある人で。
病的な楽天性と言いますか…。
ま、病気だと思うんですがね、
不安というものを感じることができないというね。
うーん、つまりまぁ欠陥というのか…ねぇ。
ま、そう言いましたら、あの人「なに?!」と怒ってましたが。
まぁ、病気みたいなもので。
ただ、そうは言っても、ジャングルでも結果的にはね、
あの人が「寝れない」と、あまりに落ち込むものですからね、
他の三人は善人ばかりですから、「それは仕方ないよねぇ」ということでね。善人一致でシーツをあの人に三人分貸し与えてね、
で、あの人は、「ありがとう、ありがとう」と泣きながらね、
そのゆずってもらったシーツを束ねてね、
そのシーツにくるまって、
他の三人が深夜、寒くて寝られず身を固くする中、
ひとり安眠の上に寝汗までかいたという武勇伝を持つ人ですから。
まぁなんというんでしょうか。
時々刻々と変化していくご自分の心象風景を大音声で吐露しては、周りの者を巻き込み、最後にはご自分一人がのうのうと好い目に合われるお人柄でございますから、
それを思えば25日も、結果的に上手いことやられるのだろうと推測するばかりでございます。
では、本日も各自の持ち場で奮闘願います!
解散!
【藤やんうれしーの悩むだけ損!】
ネットサイト「電撃オンライン」にて月2回のペースで「お悩み相談」を執筆しております。
(13:53 嬉野)
2012年11月19日(月)
2012年11月19日(月)
嬉野です。
この土曜日から作業をしておりました
ドラマ「幸せハッピー」の仕上げ作業が、
本日終了いたしました。
今はね、ただただホッとしております。
そうしてね、心から満足してね…おりますよ。
なんか、とても不思議なテイストのドラマになりました。
青木豪の書くものは、難しい話ではないのだけれど、
分かりやすい物語でもないからね、
このドラマの展開が分かる分からない、
そんなことも人それぞれにいろいろ違ってあるのだろうけれど、
でも、見てもらえば、きっとね、
何かを感じてもらえると思います。
その感じてしまうものが何であるのか、
それがね、実はぼくにもまだ分からないのです。
でも、言葉にできない何かが、
この胸に降り積もっていくのです。
それは言ってしまえば、人間に対する共感なのかもしれないね。
このドラマは群像劇だから、主役以外の人の思いに不意に寄り添えてしまう瞬間がある。それはつまり自分にも覚えのある気持ちだったりするのだと思う…。
人が生きている。生きている以上、
ぼくらは、考え続け、思い続け、
ぐるぐる、ぐるぐると、しているのだと思うのです。
そのことが自分にも覚えがある。
知らない間に、ドラマを見ながらそんな気持ちになっている。
多分そんなドラマです。
でも、こんなドラマを、
ぼくらは、よく作り上げたなと素朴に思うのです。
ドラマ「幸せハッピー」の本サイトも本日から立ち上がりました。
北海道以外の地域にお住いの皆さんに、いつ、ぼくらのドラマを見
てもらえるのか、ぼくらには分かりませんが、どうぞ多くの人に見てもらえますように。
HTBスペシャルドラマ「幸せハッピー」。
北海道では12月15日午後3時30分から放送です。
あ、それと!
大阪マラソンにぶっつけ参加する藤村さんたちの写メを撮れる環境にある人へ向けての応募フォームも今日立ち上がっておりますのでそちらもあわせてご覧くださいませ!
では本日は、とりあえずここまで。
それでは諸氏。
本日も各自の持ち場で奮闘されますように。
切に願いあげます。
解散
また明日!
【藤やんうれしーの悩むだけ損!】
ネットサイト「電撃オンライン」にて月2回のペースで「お悩み相談」を執筆しております。
(17:14 嬉野)
2012年11月15日(木)
2012年11月15日(木)
一週間ぶりのご無沙汰でした。
嬉野です。
今年の夏の、暑い暑い時期に撮影をいたしておりました、
ドラマ「幸せハッピー」の放送が1ヶ月後に迫りましたのでね、
「幸せハッピー」の公式サイトがそろそろ立ち上がろうとしておりまよ。
撮影が始まる頃から、うちの広報の大越さんがサイトのデザインイメージを考えてくれていたので、お世話になっている関係上、私としても大越さんの求めるままに記事を書かねばならず、ねぇ。
加えて、大阪マラソン(うちの藤村さんと店長さんがぶっつけ参加するのよ奥さん)も近いのでね。
そっちも、「大阪マラソンを走る藤村さんと店長さんの勇姿」を沿道から写メして、その時の状況をレポートした一文を添えてHTBへ送ろう!の応募フォームをね、
これも立ち上げないといけないものだから、
こっちの文言も書き、店長を当日のユニフォームに着替えさせて写真を撮りに会社の屋上へ連れ出せばね「寒い」だの「なんだの」ね言う中を立たせて撮りましたよ。
これも近々立ち上がります。
ということで、ここへ顔を出す時間が無くてねぇ、
という、これはあからさまなる言い訳でありますが!
本日はこれにておいとまをいただきまして、
また明日ご参集くださいませ!
それでは、本日も各自の持ち場で奮闘願います!
解散です。
【藤やんうれしーの悩むだけ損!】
ネットサイト「電撃オンライン」にて月2回のペースで「お悩み相談」を執筆しております。
(16:11 藤村)
2012年11月8日(木)
2012年11月8日(木)
嬉野です。
今日は木曜日です。
今日はまだ金曜日ではありません。
金曜日はとにかく明日です。
明日は金曜日だから
「ラブレターfromクジラ2奮闘編」の更新があります。
それだけです。
問題…ないですよね…?
じゃ。
本日も各自の持ち場でね。
奮闘してください。ね。
解散してください。
言いたいことはわかってっから!
充分過ぎるくらいわかってっから!
解散!
【藤やんうれしーの悩むだけ損!】
ネットサイト「電撃オンライン」にて月2回のペースで「お悩み相談」を執筆しております。
(12:24 嬉野)
2012年11月6日(木)
2012年11月6日(木)
嬉野です。
奥さん、この頃の私の心の慰めはねぇ、
鯨森惣七さんが、八丈島での日々の徒然を書き送ってくれる
「ラブレターfromクジラ2奮闘編」の原稿を構成することです。
作業しながら、私は実に慰められるわけですよ。
この心がね。
つまりこの私が早く読みたいものだから、
あのおじさんから届けられる原稿を熱心に構成してしまうのですね。
鯨森惣七さんからは、文章とイラストが別個に送られてきますから、クジラさんの文章をどこで切って、どのイラストをどの文章の下に貼るかは、ページ立ては全部私任せということになっているのです。
鯨森惣七さんは、意外に放任主義の作家ですね。
でもその作業が、私には楽しいの。
この頃は「ラブレターfromクジラ2」を眺めながら思うの。
あれを眺めることは、「あのおじさんの頭を通して、もう一度この世を眺めるという作業になるのだな」と、ね。
この頃の私は、そんなふうに思うようになったのです。
あのおじさんの頭の中は、ひとつの乱暴な濾過装置なものかも知れないですよ。あのおじさんの頭で濾過してもらえば、この星の今のありようも、まんざら捨てたもんじゃなく見えてくる。
あのおじさんの濾過の基準は定かではないけれど、
でも、生き物に悪い影響を及ぼすものは全部濾過されているような気がする。そして一見どうでもいいようなものが残されているようにも思えるけど、そこは凡人の判断できる領域ではないのだと思ったりもするのです。
あのおじさんの頭を通してこの星を眺めれば、
この星は、まだまだ呑気なものなのだなと、
そんなことをね、あおのおじさんは思わせる。
あれは、妙なおっさんです。
ということで奥さん。
明日は金曜日。「ラブレターfromクジラ2」の更新日です。
良ければ眺めてご覧なさいな。
携帯ではやっておりませんので悪しからず。
そして、大阪マラソン。
来週あたりを目途に、走る藤やんの写真とその時の場所と時刻と様子(あくまでも主観でいいのです。状況の正確さはいっさい問いません)を、現場から携帯写メ等で送信する「応募フォーム」を立ち上げます。
なので、特に京阪神にお住いのみなさんで「我と思わん」方は、現場へ急行して当日取材に専心してくださいませ。
その労力に対するねぎらいはもちろん言葉だけです!
でも、好いですよね!
という告知でね、本日の日記は終わります。
それでは諸氏!
本日も各自の持ち場でよろしく奮闘願います。
解散。
また明日ね。
【藤やんうれしーの悩むだけ損!】
ネットサイト「電撃オンライン」にて月2回のペースで「お悩み相談」を執筆しております。
(16:01 嬉野)