10月12日金曜日。藤村でございます。

藤村

10月12日金曜日。藤村でございます。
わたくしは現在、DVD第10弾の編集作業を中断して、他番組の仕事に借り出されております。
北海道内で放送されております、やまだひさしさん、離目音尾先生司会の深夜番組「素晴らしい世界」。その中のドラマのコーナーの来月分を、私が作ることになったのでございます。
来年は大型ドラマに挑むことだし、その中で試してみたい撮影方法もあるし、その予行演習として、ということでお引き受けした次第。
「素晴らしい世界」のドラマコーナーは、1話5分×4週分(1ヶ月)で完結というショートドラマ。
主演は常に離目音尾先生。共演者には、これまで神木龍之介くんをお呼びするなどたかがローカル深夜のミニドラマとしては意外と豪華。
その来月分の作品を来週、3日間の予定で撮影することになっております。
お話の内容はというと、とある田舎道にあるバス亭が舞台。
そこにたたずむ初対面の男女ふたり。
彼らは、ある理由からそこにとり残されてしまった・・・という、バス亭だけで展開するワンシチュエーションドラマ。
タイトルは「残された2人」。
もう撮影前から、ずいぶん言っちゃってるけど、まぁたかがローカル深夜のミニドラマだからいいだろう。
最初に脚本が上がった段階では、音尾先生演ずる主演の男は気弱そうなどこにでもいる等身大の30代の男。ただ離目先生の魅力というのは、その確かな演技力とともに存分に存在感を主張するその類まれなる奇天烈な顔面。
あの顔面をもってして等身大の男などもったいない。
男のキャラクターを多少、変人にしてほしいと注文したのであります。
しかしまぁ、話の筋はすでに出来上がってるわけだから、そこをいきなり「主役を変人に」と言ったって、基本的なストーリーは変えられない。もともと変人の話ではないのだ。
ならば「見栄えだけでも変わった男に」ということで、奇人変人のスタイリングを得意とするカリスマスタイリスト小松氏を昨日、お呼びしたのであります。
こちらのおおまかな要望を伝えると、カリスマはその場ですべてのスタイリングを決定し、メモを片手に「じゃもうわたし買いに行ってくる!」などと、颯爽と「登山用品店」へと向かいました。どんな格好で登場するのかお楽しみ。
このドラマ。舞台は「田舎道にあるバス亭」ということで先週、札幌近郊のそれらしいロケ地を探しに出かけておりました。
北広島、恵庭、千歳、早来、長沼・・・このあたりは、田園風景あり、山あり川あり、牧場もありということで、「どこだって撮れるだろう」という場所。しかし、いざ探してみると交通量が多かったり、飛行機の騒音があったりで、なかなか決まらない。
走り回った挙句に「おぉ?ここ意外といいんじゃないの?」と、決めたロケ地は、なんと会社から15分の札幌の町の中。
「田舎道にあるバス亭」を、会社から15分の町中に作り上げる。
もう撮影前からこんなネタバラシもしちゃってるけど、まぁいいや、たかがローカルのミニドラマ、こんな前フリがあったっていいだろう。
果たしてあのロケ地が見事「田舎」に見えるのか!
主役のキャラクターにしても、ロケ地にしても、どうなるのか、撮影当日まで楽しみであります。
作ってる側からして、どうなるかわからない楽しさ。
ドラマというものは、脚本やカット割りというちゃんとしたレールがあり、そこに沿って、想定外のものは極力排除する。それがスタッフの使命であり、そのための撮影システムも構築されています。
だから視聴者はバランスの取れたドラマを、何も考えずに見ることができる。
でも、いつしかドラマを見なくなってしまったのはなぜだろう。
あとに残らなくなったのはなぜだろう。
もしかしたらそこに、妙な人間くささや、アンバランスさ、必死さ、のようなものが、見て取れなくなったからじゃないんだろうか。
いや、システムが発達したってドラマの現場にはどこも葛藤や苦労はあり、みんな必死にやっている。
でも作り手は最終的なバランス、言い換えれば「わかりやすさ」のようなものを、すべての念頭に置いて作品を仕上げていないだろうか。
「わかりやすさ」という親切心は、時に、「いいよ!わかってるよ」という反感を生む。
逆にわかりにくさ、言い換えれば「アンバランスさ」や「危うさ」は、見る者の注意を引き、だから理解しようとつとめる。客はバカじゃない。
でも、そういう意味での危うさのようなものが、今のドラマには感じなくなってしまった、ということではないだろうか。
幸いにも、というか、たかがローカルのドラマでは、どうがんばったって最終的にバランスの取れたものなんかできやしない。危うさやもろさを隠し切れない。「バランスが取れてるように見えるもの」は作れるだろうけど、そんな浅はかなものは、視聴者にすぐ見抜かれる。
だったらいさぎよく、アンバランスでいいではないか。
どうなるか楽しみだ、ぐらいの危うさでいいではないか。
そう思えばたぶん、ローカルでも無理なくドラマは作れると思うんだけど。
ドラマというのは手間と金がかかります。でもそれに見合う視聴率はなかなか取れない。同じ1時間なら手間のかからない情報番組やバラエティーの方が費用対効果はいい。
ではなぜドラマを作るのか?
一言で言うなら、それは「テレビ局の最後の意地」、じゃないでしょうか。テレビがクリエイティブであるための、最後の意地。
これを捨てたらテレビは、特にローカル局は、数字と効率だけを追い求める電波塔になっちゃうような気がする。
でも北海道では、NHKさんも、老舗のHBCさんも、uhbさんも、このところ単発ドラマを作っております。
他局ながら、北海道のためにも、お互い意地を張っていきましょうと、思うのであります。
ささ、いろんなこと言ったけど、
結局、今一番の気がかりは、来週の天気。
雨降ったらアウトだな。
オール外ロケだからな。
考えるのやめよ。晴れるに決まってるから。
じゃぁみなさん、よい終末を!(久しぶりに言った)
(18:23 藤村)