お盆でございますな。8月15日火曜日。藤村でございます。

藤村

お盆でございますな。8月15日火曜日。藤村でございます。
今年の夏は北海道もずいぶんと暑く、私は夜な夜なウッドデッキに座布団を持ち出してドッカと座り、夕涼みをしております。
そうしますと一番下の坊主が懐中電灯と星座早見表を持ってまいりまして、
「あれはなんていう星?ねぇ!ねぇ!」
と、私の顔にびかびかと懐中電灯を当ててうるさくまとわりついてまいります。
星座というもの、恥ずかしながら私はオリオン座しか判別できません。知識ゼロ。それで去年までは、「んー?知らんなぁ」で通しておりましたが、しかしそれではせっかくの子供の旺盛な知識欲に水を差すことになる。そこでわたくし今年は一計を案じました。
6年生の次女を呼び出しまして、
「今年の自由研究はなにやるんだ?」
「ぬいぐるみ作るの!」
「ダメだ。星を調べなさい」
そう命じまして、うるさい坊主の相手と次女の宿題を一挙に片付ける作戦に出たわけでございます。
夏の夜空を見上げてみますと、いくつかの目立つ星があります。南向きのほぼ真上で輝く青白い星。「あれはなんだ?」と、星座表と照らしあわせて見ますれば、それは「ベガ」と言うらしい。そうか、薄型テレビは星の名前だったのか。
ベガの下にも目立つ星がある。「アルタイル」。聞いたことない。
「ほれ、星座の本で調べてみろ」
調べるのは次女の役目。
「おとう!ベガとアルタイルは日本では織姫と彦星って言うんだって!」
「なにぃ!」
星座表を見ると、この2つの星の間には天の川が流れている。
「ぬわるほどぉ!あれが織姫と彦星か!」
織姫と彦星の左側にもうひとつ目立つ星がある。「デネブ」。聞いたことない。
「調べろ」
「おとう!ベガとアルタイルとデネブで『夏の大三角』って言うんだって!」
「ぬわるほどぉ!確かにデカイ三角形だ!」
こうして今年は少しづつ、私も星の知識を増やしていったわけでございます。
そして先週の土曜日。いつものようにウッドデッキに寝っ転がって星を見ておりますと、横で麦茶を飲んでいたカミさんが、
「あれ?今の流れ星?」
なんてことを言いやがる。いくらウチが札幌の外れにあるからといって、いくらなんでも流れ星が見えるはずはない。私がこれまで流れ星を見たのは冬山登山で行った八ヶ岳の頂上と、そして去年の西表だけだ。
「こんなとこじゃ見えないの」
「そーかなぁ。スーって流れたけど」
「そんなにね、スーっとは行かないの。ピカッって光って、一瞬でシャッって流れるの」
「うわぁ!」
「なんだよ!」
「今スーって流れた!」
今度は中学生の長女がすっとんきょうな声を上げやがる。
「流れ星だ!」
「違うって。そこの公園で花火やってんだろ。打ち上げ花火」
「でも音聞こえなかったもん!あれ流れ星だ!やったぁ!流れ星見たぁ!」
「違うって・・・う、うわぁ!なんだ今の!」
白い光が、ウチの屋根スレスレみたいな感じで、スーッと横切って行った。
「今のホタルか?」
「いないよ!こんなとこに!」
「流れ星か?あんなにハッキリ見えんのか?」
それは今までに見たことのない、やけにハッキリとした光の線だった。それから一家揃ってじーっと空を眺めていると、やがてスーッと長い尾を引いた流れ星がハッキリと見えた。
「あれ流れ星だ。すげぇ・・・」
「ね!そうでしょ。わたし初めて見たぁ!」
カミさんはこの日、生まれて初めて流れ星を見た。
「今度流れたら願いごとしよ!わたし億万長者になりたい!」
長女の夢は億万長者だということを、初めて知った。
「でも3回言わなきゃダメなんだぞ」
「億万長者になりたい!億万長者になりたい!億万・・・ダメだ!長すぎる」
「じゃ、カネカネカネって言え」
「そうする!カネカネカネ!」
しかし、それから流れ星はパッタリと見えなくなった。
「土曜日の夜にさ、ウチから流れ星見えたんだけど・・・」
きのう出社して嬉野先生に話したら、先生は「うわッ」と声を荒げて、それまでの温和な顔が、苦虫をかみつぶしたような表情に一変した。
「うわぁー!忘れてたッ!くッ・・・楽しみにしてたのに」
どうやら「ペルセウス流星群」というやつが、先週の土曜日に最大に見えたらしい。それを先生は何かで読んで、楽しみに待っていたと言うのだ。しかし、すっかり忘れて早々に寝てしまったと。
「くぅわぁーっ・・・忘れてましたぁ!」
それからもえらい剣幕で悔しがっていた。
思うに先生は、ペルセウス流星群を密かに見て、それを私に自慢しようと思っていたのではないだろうか。
「ふふふーん・・・藤村くんねぇ、ペルセウス流星群って知ってるかい?ボクはねぇ、それを見たですよ」
かなんか言いたかったのではなかろうか。昨日の先生の尋常ならぬ悔しがりから、どうも私にはそう思えてならないのだ。
というわけで、さて、あさっての木曜日。皆様には、先日チラリとお話いたしました「小さなイベント」の詳細をお知らせいたします。しばしお待ちを。
明日は、う先生の「癒しの日記」でお楽しみ下さい。
ではまた木曜日に。はい解散!
(20:39 藤村)