2007年12月12日(水)

嬉野

2007年12月12日(水)
さあさあ、本日もやっぱり嬉野です。
えぇ今回、来年のドラマ制作のための取材で、ある方の紹介を受け、札幌と小樽とにある五つのコーラスチームのもとに足を運び練習風景を見学しました。今年の夏の日のことです。
ぼくらとしては、コーラスの歌声に親しむのも初めてのこことですから、その歌声を間近に聴くことも当然初めてのことでした。
長くコーラスに親しむ事の無かった者にはそれだけの理由があるわけで、つまりは、ただただ長くその魅力に気づく気がなかったの一事に尽きるわけです。
そんな人間が、練習場に響く女性コーラスの歌声に包まれて、いきなり感動を覚えました。
いきなり「感動しました」という言葉を発しては、あまりにも直接的で実も蓋も無く。
安易に受け取られるだけなのかもしれませんが、いまだ、それ以外に言葉は見つからず、ただただ、あっけないほど単純に胸を打たれたわけなのです。
顰蹙を覚悟で、大げさに時代掛った言い方をすれば、世間を舐めて我が物顔で生きてきた恥知らずな金貸しが、乙女の妙なる歌声に自らを恥じ入り改心したようなことだったのだろうと思います。
素朴な、人の声の持つ力というものを、ぼくらは久しく忘れていたのではないだろうかと、素直に思わされた瞬間でした。
合唱の歌声とその歌われる歌詞を噛み締めながら、自分自身が、身の丈に合った本来の自分を取り戻して行くようで、肩の荷が降りるような、ほっとして気持ちが洗われるような、なんだかそれは、長い長い寄り道をしていた中学生が、不意に我が家に帰り着いたような経験だったのです。
ふと気づけば、自分は懐かしい父母の家の前に立ち、辺りは既に日も薄く暮れなずみ。
久しぶりに見る我が家の窓には、暖かな明かりが灯り、台所の窓からは好い匂いがする。
玄関ドアを開け、「ただいま」と声をあげると、廊下の奥から母親と父親が待ちかねたように笑顔で迎えに出てくれる。
「どうした。ずいぶん遅かったじゃないか。さぁお上がり。ご飯が出来ているよ」。
時々ぼくは思います。
ほんとうにぼくらは、長い長い寄り道をしているのかもしれないと。
何がぼくら人間にとって幸せなのか。
そんなこと、本当は、もうみんな、分かっていることではないのか。
先週の東京出張の時、藤村先生と六本木で映画を見ました。
「続・三丁目の夕日」です。
それこそ笑って泣いて最後の最後まで楽しんだのですが。あの映画は、時代設定こそ昭和34年ですが、けして昔を懐かしむ映画ではないなと思いました。
だって、あの頃が手放しで好かったと言える時代なわけではけしてなく。
あの時代に、より好い時代をと望んで、ぼくらは今に至っているわけなのですから。
ただ少し、寄り道をしてしまっている。
それだけの事なのかもしれないと思うのです。
VFXが作り出す、映画の中の素朴な街並みの東京で、
鈴木オートの家族も、茶川さんの家族も夕日を見ながら明日を思います。
彼らがその視線の先に見た明るい未来を、やがてぼくらが作る。
そんな気にさせるのが、あの映画の魅力だったと勝手にぼくは思っています。
そうしてそれは、主婦のみなさんの合唱の歌声にも通じるような。
そんな気が、なんだかするのです。
さて、本日も藤村先生は、風邪も治って元気にDVDの編集作業に邁進中!
御心配なく。
そうそう。
「ヨーロッパ20ヵ国完全制覇の旅」が、お馴染み、インプレスTVで配信中です。
御覧になってみっかなとお思いの諸兄はどうぞ覗きに行ってみてください。
それでは、本日はこれまで。
また明日、お会いしましょうね。
解散。
(18:31 嬉野)