8月20日月曜日となりました。藤村でございます。

藤村

8月20日月曜日となりました。藤村でございます。
ささ、お盆休みも明けて本日より通常営業であります。
札幌市内の小学校も本日より2学期開始ということで、3年生のくそ坊主が朝早くから家を出て行きました。
北海道の夏休みは短いですな。その短い夏休みを懸命に楽しもうと、くそ坊主が毎日毎日、死にものぐるいで「水族館連れてけ!」「動物園連れてけ!」「キャンプ連れてけ!」と直訴してまいります。
最近わたくしは、なるべく子供をほったらかしにしようと思っておりますので、「行かない」「自分で楽しみを探せ」と申し付けます。
そうしますと、
「じゃぁ、せめてテントを立ててくれ」
と、くそ坊主が申しますので、
「じゃぁ、手伝え」
と、倉庫からテントを出して、庭に立ててやります。
「どっこも連れてってくれないから家でキャンプだ」
と、くそ坊主は反抗的態度でテントに立てこもります。
しかし、30度越えの猛暑。あっさりとテントから出てきて、
「暑い。プールに連れてけ」と。
「行かない」と。
「じゃぁ、プールを出せ」と。
「手伝え」と。
倉庫からお子様プールを出し、水を入れてやります。
しばし、小さなプールの中で涼しげにぐるぐると回っておりましたが、
やがて・・・どぅわーん!
という大音響とともに一気にプールから水が流れ出しました。
「な、なんだよ!」
坊主がプールに小さな穴を見つけて、そこに手を突っ込んだと。穴は一気に広がってプールはあっけなく決壊。
「おまえの夏は、終わったな・・・」
しかし、それではちょっとかわいそうなので、
「じゃぁ、ほんとのキャンプ行くか」
「行く行く!」
「よし。じゃぁ、こいつとちょっとキャンプしてくる」
わたしはその日の午後、坊主を連れて一泊のキャンプに出かけることにしました。
こういうとき札幌はいいですね、少し走ればキャンプ場なんかいくらでもある。お盆の最盛期でも、有名なオートキャンプ場を除けばテントはいくらでも立てられる。
「明日の昼には帰って来るから」
男ふたり、テントに寝袋だけの軽装備で出発いたします。
「山の中だからな、クワガタいるぞ」
「取る取る!」
1時間半ほど走って、山の中の質素なキャンプ場へ。
「寒いな・・・」
山の中は半袖じゃぁ鳥肌が立つほど寒かった。雨も降りそうだし。
「クワガタ取りに行こ!」
「いねぇって」
「いないの!」
「クワガタ死んでるって。こんなに寒かったら」
「なんだよ!」
「まずはテントだ。手伝え。それから温泉行こう。風呂入ろう。」
我々のほかには2組しかいないだだっ広い芝生のキャンプ場に、ぽつんとテントを立て、再び車に乗り込んで、近くの温泉に向かいます。
キャンプ場を出て、ほんの2?3分走ったところだったでしょうか。
わたくしは、わたくしは、ついに見ました。
北海道に暮らすこと10数年。
わたくしは、ついに念願のあいつを見たのであります!
道路の横から、真っ黒い生き物が飛び出してきました。
「うっ!うわっ!うわっ!・・・クマだッ!クマだッ!クマだよ!おい!クマだ!」
車の目の前を、野生のヒグマがのさっのさっと横切って行きます。
「おい!おい!おい!見たかおまえ!クマだ!クマだ!クマだ!」
クマはすぐに反対側のやぶの中へ消えて行きました。
「おぉーっ!ついに見たぞぉ!クマだよぉー!クマ見ちゃったよぉー!」
横にいるくそ坊主は、無表情で固まっております。さぞや驚いたのでありましょう。
「おい、おまえ見たか!見た?見た?」
「・・・・」
「見てないの!」
「見た・・・」
「おぉ!見たか!すごかったよなぁー!」
「・・・おとう、うるさい」
「あぁ?」
「どうでしょうの時とおんなじ」
「あ?」
「おとうの声にびっくりした」
・ ・・坊主はクマではなくわたくしの声に肝をつぶしたそうであります。大泉洋と同じ。
「・・・そうか。悪かったな」
「ねぇ、今日キャンプ場で寝るの?」
「寝るよ。なんで?」
「だって、クマいるじゃん」
「あ、そうだな」
「車の中で寝る?」
「バカ野郎。せっかく立てたんだから、テントで寝るよ」
「クマいるじゃん」
「大丈夫だって。おとうはな、ユーコン川ってとこでキャンプしてな・・・」
ユーコンでの教訓、「テント内に食べ物を持ち込まない!」「体内からも甘い匂いを発しない!」を坊主に教えてやりました。
「おまえがお菓子をかくしてなきゃ大丈夫だ」
その後、温泉でゆっくり湯につかり、温泉宿の名物という「鴨鍋」を大広間で親子ふたり、美味い!美味い!と言いながら食い、そうこうしてるうちに日がとっぷり暮れてきたのでキャンプ場に戻り、やることないもんだから7時半には寝て、早く寝すぎて朝5時には起きて、午前中のうちに札幌に帰って来ました。
玄関に入るなり坊主はでっかい声で、
「ねぇー!きのうクマ見たよーッ!クマ見ちゃったよーっ!」
と叫んでおりました。
この夏の、小さな思い出でありました。
ではまた明日。
(18:17 藤村)