2006年10月17日火曜日

嬉野

2006年10月17日火曜日
嬉野であります。
遅い時間にこんにちは。
えぇ、夕方、日記を書き上げる寸前で、別件の用が入りまして、で、中座する時に、念のために日記をコピーしとこうと思いましてね、キーを押したんですけどね、押し間違えたんですね。
全部消えました。
ねぇ、こういうのはね、そうとうに凹みますよ。
凹みますけど、気を取り直してね、もう一度始めてますよ。
で、こんなに遅いわけですよ。
すいませんね。
えぇ先週末にね、私事ですが東京の友人から電話がありまして、小祭りから戻ったばかりでしたが、この土曜日曜と、また東京に出掛けておりました。
恩ある方にね、お別れをしてきたのでありますよ。
したら東京は汗ばむような陽気でしたね。
まだまだ半袖で丁度好いのですよ。
驚きました。
札幌はこんなに冷え込んできているのに。
なのに東京は汗ばむわけです。
こちらは、そろそろ紅葉も始まろうかという頃なんですよ皆さん。
燃える秋の到来なんですよ。
それなのに東京は半袖。
目に鮮やかな秋というのは、やはり北国特有のものなのでしょうね。東京のあの暖かさから戻って札幌のピリピリと冷え込む大気の中で、今、そんなことを強く思いますね。
おまけにね、せっかくだからということで、東京で、秋ものの服買ったんですけどね、着られやしませんよ、こんなに寒くちゃね。
さぁ、それにしても渋谷の小祭り。
11日間もやっておったんですね。
その時間的な量もあってか、終わった後はなんとなく脱力いたしました。最後のお客さんを送り出す頃には、「終わるんだ」ということに侘しいものをぼんやりと感じたりしましたね。
不思議なものですね。
小祭りに係わった東京のスタッフも全員脱力して、ぼくらが札幌に引き上げてしまった後は、昨日まで続いていた喧騒と慌しさから急に放り出されて、淋しく心細い思いで、小祭りの開催された11日間をぼんやり反芻しているそうでありますよ。
その小祭りの会期中の話。
ぼくと藤村先生は一旦中抜けして札幌に戻ることになったんですが、ぼくだけは札幌に戻らないで青森空港に直行したんです。
どうしてかと言いますとね、青森空港でうちの奥さんと合流して、二泊三日でしたが青森バイク旅に出かけたわけでありますよ。
ちょっと遅い夏休みをね、いただいたのでありますよ。
で、小祭りが始まる前、カミさんは札幌でね、ぼくに聞きました。
「どこに行きたい?」
「久しぶりだからあんたの行きたいところに連れてってあげる」
って。
でもね、ぼくには、とくに行きたいところは無いのですよ。
そう言いましたらね、
「行きたくないなら別に無理して行かなくていいよ」
そう言って、不機嫌になりましたが、そうではないのです。
行きたくないのではけしてない。とても行きたいのです。
ただ、行きたいと強く思う場所がとくに無いだけなのです。
おかしなことを言うようですが、ぼくが見たいのは、どこかへ向けて走る途中、不意に目の前に広がる風景の中にあるのです。
カミさんの運転するバイクの後で、これまでもそんな風景をたくさん見てきました。それはどれも、けして有名な観光地などではないのです。
ただただ普通にさりげなく古びてしまった町なのです。
「あぁ、こんな町が今でもあるんだ」
そう思える町に、移動中、不意に出くわすことがあるのです。
そんな町は有名な観光地ではないから「行ってみたい」目的地には、なかなか挙がらないのです。
でも、観光地ではなく、普通の生活を営みながら普通に古びてしまった町だからこそ落ち着いた生活感が漂っていて、ぼくは、ほっとするのです。
そういうほっとする町に不意に出くわす度に、ぼくはワクワクするのです。ぼくが感じる旅の醍醐味は、どうやらそんな瞬間にあるらしいのですよ。
今回、黒石という町を通りましてね。
黒石は弘前の近くにある町で、「こみせ」という江戸時代から続く木造のアーケードで有名ですから立派な観光地なのですが、それでも観光客でごった返すこともない、静かでひっそりとしたたたずまいを見せる町でした。
ぼくら夫婦は「こみせ」を歩いた後、長崎屋さんという町中にある食堂でラーメンを食べました。
長崎屋さんの隣は地元のデパートのようでしたが、中を覗くとガラン堂で、既に営業はしていないようでした。
他にもところどころ歯抜けのように駐車場がありました。
ここにも少し前にはお店があったのかも知れない、そんなことを思わせるたたずまいの町でした。
長崎屋さんは古い建物でね、ガラガラっと引き戸を開けて入ると床が三和土(たたき)なんですね。
(たたき)なんて、もうめったに見ないし知ってる人も少ないのではないでしょうか。要するに堅く固めた土の床なんですね。
で、堅くしっかりと固まるように粒の揃わない三種類の土を混ぜてるんです。砂と土と砂利石だったかな。
だから三和土と書くそうですよ。
それを固めるためにたたくからでしょうね、だから「三和土」と書いて「たたき」と読ませる。
そんな古いつくりの店がまだ営業してる。
ぼくはなんだか嬉しくなりました。
ぼくらが食べたラーメンは「支那そば」という名前でね、いりこ出汁の利いたスープがとても美味しかったですね。
建物は古いものでしたが、掃除も行き届いていて明るく感じの好いお店でした。
支那そばを作ってくれたおばさんは、「私が元気なうちはこの店を守っていたい」と言ってました。
今年の春に新潟を走った時も、村松とかいう驚くほど普通に古びている町を通過しました。
ぼくの気持ちを揺さぶるそれらの町は、きっと昔、一度大きな繁栄を見せた町だろうと思うのです。
でもその繁栄は、時代の波が大きく変わる時、その波に乗り切れず、そこをピークにそのまま普通に古びていってしまった。
だから、ただ古びただけではなく往事に見せた繁栄の名残がそのまま魅力的に残っている。
そんな風に思うのですね。
そんな町に出くわすと、何日かで好いから住んでみたいとも思いますね。
そんなことを思う時はたいてい午後遅くて、斜めに傾きだした西日が赤い光線を国道沿いに建つ建物のガラス窓に反射させたりしているのです。
暮れ始めた町の中、家路を急ぐ中学生たちが笑いながら歩いていたりするのです。こころなしか皆素朴そうな横顔をしているように見えるのです。
ぼくが、高校生だった30年前と何も変わっていないような気がしてくるのです。
そんな素朴に古びている町が、日本にはまだとてもたくさんあるはずなのです。
小祭りの開催された渋谷の雑踏だけが2006年の風景ではないのですよね。ぼくが旅の途中に出くわすそんな素朴に古びた、時間が止まったような町も、間違いなく2006年の日本の風景なのですからね。
やっぱり、書き直すと着地点が随分変わってまとまりませんが、そんな町を幾つも通り過ぎる旅を、いつかもっと長期間、集中的にやってみたいというのが今のぼくの一番の願いですね。
それでは皆さんまた明日。
本日はこれまで。
解散。
やれやれ。
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(20:31嬉野)