2009年12月14日(月)
2009年12月14日(月)
こんばんは奥さん。
嬉野であります。
嬉野は先の土曜日。
うちの藤村とともに。
東京は池袋にあります。
東京芸術劇場で上演されておりますところの。
グリングさんの舞台「jam」を見てまいりました。
奥さんね。
グリングさんのお芝居は。
見終わったあとの余韻が好いです。
それをあの日もしみじみと感じて。
あれはなんだろうと今も思いながら。
お芝居の最後の方で。
突然この自分の気持ちの中に。
温かいものが滲み始めていることに気づくことになる。
そのあたたかさの寄せてくるもとが自分には分からない。
芝居を振り返っても思い当たらない。
そんな温かい雰囲気の芝居ではなかったのに。
どこにもほんわかとしたものなんか無かったはずなのに。
どちらかといえば、登場人物それぞれに。
ストレスフルな状況を抱えさせられているというのに。
それなのに。
それなのに不意にやさしい波に。
この胸が洗われる。
それを合図にするかのように。
舞台の上で。
何かがいっきに展開していく。
青木豪の書く世界にはそんなことがある。
そうなのです奥さん。
「jam」というお芝居は。
軽井沢かどこいらかの。
避暑地にある。
小さなペンションでのお話で。
それもある一夜の。
それも1時間45分間ぽっきりの時間の中でのお話で。
場面転換もない。
一場限りの。
リアルタイムで進行するお話で。
場所はペンションのロビー。
その場を出入りするその宿の家族と。
その宿の常連客と。
行きずりの泊り客とが。
ぶつぶつといつまでもつぶやき続けながら。
その彼ら彼女らの。
そのありふれた日常的な会話を。
ぼくら観客は、客席から覗き見る。
立ち聞きをする。
しらぬうちに。
ぼくらの中の好奇心はゆり起こされ。
最後までその場を立ち去ることなく。
立ち聞きをし続ける。
そうするうちに。
ぼくらの心に何が仕掛けられたのか。
わけも分からないのだが。
芝居を見るうちに。
この身に降り積もってしまった。
このぼくの人生の負荷が抜き去られる瞬間が来る。
それはまるで。
名人のスリの技のように。
この胸に長くあった重石の一部が抜き取られていく。
そのとき不意に浮力がつき。
ずっと見えなかった塀の向こうが。
少しだけ見えた気がして。
この胸は。
どぶんと波に洗われる。
ふだん。
芝居などに縁の無い。
そんな人に見て欲しいとぼくは願うのです。
その人のために青木豪とグリングはいる。
その人が池袋の。
東京芸術劇場に。
足を運ぶのを待っている。
出逢いは。
めぐり合い。
このどうでしょうのページに今日訪れて。
この日記を読んだことは偶然。
その偶然に突き動かされて。
劇場に足を運ぶ。
その人がグリングの芝居を見て。
その胸を洗われれば。
それは運命。
そして。
運命の別名はね。
偶然といいます。
ぼくらを思いもしなかった岸に流す。
その力を持つもの。
それは偶然だけです。
ぼくらが注意を払わなければならないのは。
偶然だけなのです。
偶然に賭ける。
賭ける価値のあるもの。
それは偶然だけなのです。
じゃ、奥さん。
本日はこれにて解散!
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(19:27 嬉野)