2012年1月13日(金)

嬉野

2012年1月13日(金)
嬉野であります。
えぇ13日の金曜日だということ以外、
特段、なんということもない日でございます。
今、欲しいものは、あまり思いつかないのですが、
旅には出たいなぁとは願うのです。
まぁ年齢も既に若くは無いので、
貧乏旅行はする気もないのですが、
贅沢をする気も特段ない。
それでも出費は気にしないで好いような、
金に飽かせての地味な旅をしてみたい。
まぁ、何をもって地味と称しているのかは、
自分でも分かりませんが、
すでにリゾート地には興味がないですし、
高級旅館に泊まりたいという欲望も今はそんなにない。
昔ながらの温泉宿の並ぶ、ひなびた観光地が好いのです。
グルメの方の行きたがる美味なる晩餐が用意されるような高級旅館には、今はそれほど熱意ある興味は無いです。
それでも、ポイポイ、金は使いたいと思いますので、
金に気兼ねしないで的なことで「金に飽かせて」と思うのです。
計画するのが億劫だから、なんか流れに任せてしまいたい。
とりあえず、どっかから汽車に乗って、
昔ほど人の訪れなくなった温泉町の近くの駅で降りて、
ガランとした駅前に停まっているタクシーに宿も適当なのを紹介してもらって投宿する。
案内された部屋も、二階というだけで、
特段目を見張る調度も無く、
畳も日に焼けていて、でも掃除が行き届いていて、
部屋の真ん中に炬燵があって、
仲居さんが、茶を淹れてくれて。
仲居さんが出て行った後、一人になって浴衣に着替えて、
窓を開けると人気のない狭い通りが見下ろせる。
夏のことだから日暮れにはまだ間があって、
だから、下駄を借りて共同湯へ向かってみる。
夏の日盛りも過ぎた時間で、
この辺りは山深いのか、下界の暑苦しさは無く、
狭い通りの両側に並ぶ宿屋や酒屋や、みやげ物屋の佇まいやら看板やらに往事の喧騒が偲ばれたりすると和みます。
そういう無計画さと手に手をとって、
旅から旅へと流れて行って、
そうだからこそ、早々に帰りたくなるかもしれないし、
妙にハマッテ漂白の旅になるのかもしれない。
その辺りに気を取られないために、
金に飽かせて旅に出たいと思うわけでね。
もちろん、そんな資金援助の宛てもなく、
想像するだけならタダだろうと、
こうしてぶつぶつと書いているのでありますが。
むかし読んだことがあります。
「紀行文では、必ず旅先での出逢いがあるものだけれど、現実には、さしたる出会いもないものですよ」
と、作家のどなたかが書いておられましたが。
「そーいうものかもな」
と、妙に納得して読んだものでしたよ。
そーいうものですよ。
そんな雰囲気の好い出会いなんかないですよね。
だからこそ、物語の中で気になる人に出逢ったりするのでしょう。
でも、長逗留していれば、その宿の人たちとは顔なじみになるでしょうから、そうする家に、温泉町の住人の誰かとも顔なじみになるのかもしれない。
そういうのはね、昔、テレビドラマとかで見て、
自分で勝手にイメージしている待望の世界なのかもしれない。
お手本があって、そのお手本に共感して、
そのお手本通りの体験を、いつか自分の人生に求め始める。
そうした未知の世界が待ったいるかもしれないと、
テレビドラマや映画で昔、学習したから、
その刷り込まれた甘美な記憶が、
自分の人生とどこかで地続きになる時が来るような気がする。
そんな、昔は、ここも立派な旅館が何軒もあって、
芸者さんの置屋もいくつもあって、
夜な夜な宴会の賑やかな三味線や太鼓の音が聞こえて、
景気の好かった時代もあったけど、
あれから幾十年も経って、
今は、誰も訪れないような静かな町で、
それでも、往事の隆盛が偲ばれる朽ちかけた建物や、
古臭い看板が散見する町。
そういう町に、宛てもなく長逗留して、
私は誰に出逢いたいのだろうと思うのですが、
死んだ親父の面影に出逢いたいと、思うことはありますね。
色っぽい人に出逢いたいよりは、
死んだ親父の面影を持つようなおっさん、
いや、自分がもうおっさんですから、
親父の面影を持つなら爺さんかな。
いや、だからこそ、
今の私とそう歳の変わらぬ頃の親父の面影と、
なのかもしれない。
そんなことを、私は勝手に思っているのでしょう。
なぜかしら、そういうひなびてしまって時代から忘れられてしまったような町は、
異界への入り口であるようなね、
そんなイメージが、きっと私の頭に勝手にあるのでしょう。
まぁ、それもどこかで私が刷り込んでしまった、
お手本のある物語なのかもしれませんがね。
もうひとつの世界と繋がっている町。
漂白の旅を続けていると、
そういう町に流れ着くこともあるような気がするから、
私は、わりあい昔から「怪談」やら「ホラー映画」が好きですが、その理由には、それらの物語にある、ある種の情緒にまず惹かれているからなのでしょうね。
いやぁ、なんてとりとめのない日記でしょう。
それでは、本日も各自の持ち場で奮闘願わねばなりませんので、
私の取り留めの無い書き物も、いい加減にしないといけません。
それでは、また来週!
解散。
【藤村先生メモリアルのコーナー】
2012年となりました。
1月7日土曜日。藤村でございます。
みなさま、明けましておめでとうございます。
年明けは4日から仕事を始めておりまして、DVD第17弾「ヨーロッパ・リベンジ」の最終仕上げをしております。
美術のビジービーさんがメニュー画面のCG動画を完成させ、プロダクションIGさんからはオープニングのアニメーションが届き、この週末で音効の工藤ちゃんと音入れ作業をして、すべての素材が完成する予定であります。
ビジービーさんのCG動画も、IGさんのアニメーションも、ますますクオリティーが上がってきております。でも、別にコレ、本編とは関係のないもので、なきゃなくてもいいんです。ぺろっと1枚メニュー画面を作ればそれでいいし、オープニングは毎回使い回せばそれでいい。手間もお金もかかるし、本編さえ見られれば基本的には商品として成立するものではあります。しかし、せっかくみんなが足を運んで見に来てくれるんだから、玄関先にキレイな花ぐらいは生けておきたいという、まぁそういう心づもりでやっておる次第でございます。
今回も、みなさんを気持ちよくお迎えする準備ができましたぞ。
ね、ということでDVD「ヨーロッパ・リベンジ」は、予約を受付中でございます。初回生産枚数には限りがございますからねー。ボヤボヤしてると受付終了しますよーぅ。
ささ、商売のお話はここまでといたしまして、よもやま話をいたしましょう。
年末に東京で、日テレの「電波少年」の土屋さんと、「ダウンタウンDX」や関西ローカルの「いつもガリゲル」という番組を作っている読売テレビの西田さんとお話をする機会がありました。
どうでしょうが始まった96年当時は、「電波少年」で猿岩石さんがユーラシア大陸を横断しておりました。どうでしょうの説明をすると必ず「電波少年みたいな番組ね」と言われておりまして、私自身「電波少年みたいな感じです」と言っておりました。あの番組は、まぎれもなく土屋プロデューサーの存在が大きく、私はいつかお話を聞いてみたいと、ずーっと思っておりまして、それが10数年の時を経て、ようやく実現したわけでございます。
土屋さんの話に出てくるキーワードのひとつに「めんどくさい」という言葉がありました。自分は「めんどくさいことはしたくない」という。でもあの番組は、常に「めんどくさいこと」をやり続けていた番組です。ユーラシア大陸をヒッチハイクで横断するだの、アポなしで突撃取材するだの、それは「めんどくさいことの極致」です。何がどうなるのかわからない。めんどくさいことがたくさん起こるに違いない番組です。でも土屋さんは、「めんどくさいことはしたくない」と言う。つまり土屋さんが言う「めんどくさいこと」というのは、計画を立て、合意を形成し、段取りを踏んで、リスクを負わないように行動するという、世間一般の行動様式が「めんどくさい」と言っているわけです。
人を楽しませるとか、感情を揺さぶるとか、そういう感性を相手にモノを作る場合には、どこかでハッとするような、予想を裏切るような、そんなものが必要となります。計画を立て、合意を形成していては、そんなハッとするような瞬間は、なかなか生まれない。だから、あえて合意は形成しないし、段取りは崩す。そこから生じるトラブルは、「めんどくさいこと」ではなく、最初から織り込み済みのことで、「はははは!おもしろくなってきたよー」という喜ばしいことだと。私も、まったくそう思います。
しかし一方で、ちゃんと段取りを踏み、リスクを回避することが重要な仕事もあります。「おもしろくなってきたよー」じゃ済まされない仕事もあります。それを絶対に間違えてはいけない。政治や公共の仕事には、人々をハッとさせるような劇的なことは、そんなに必要じゃありません。人々の生活の安泰と安全が一番大事なことです。それがあってはじめて「うはははは!バカなことやってんなぁー」なんて、のんきにテレビ見て笑える社会が出来るわけですから。
読売テレビの西田さんは、実に人間味にあふれた人でした。彼が作っている「いつもガリゲル」という番組には、彼の人の良さがにじみ出ていました。彼はこの番組で、出演する芸人さんに「おもしろい言動」を求めているわけではないと。普通に、「人としての人間味」が出ればいいと言っておりました。それぞれの番組に、それを作っている人の思いや人格が醸し出されれば、それはとても興味深いものとなります。2011年の最後に、良い人たちと出会えたなぁと思いました。
さぁ皆の衆、今年も自分の持ち場で、自分に出来ることを、そんなに肩肘張らずにやっていきましょう。
そして今年、皆の衆と久しぶりに顔を合わせ、酒でも酌み交わせたらよいなと思っております。
2012年。今年も水曜どうでしょうをよろしくお願いいたします。
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くじらさんもイラスト書いてくれてますの!
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(15:15 嬉野)