4月1日木曜日。藤村でございます。
4月1日木曜日。藤村でございます。
先日、制作部の送別会(と言ってもHTBから制作部が消滅することから、我々は「解散式」と呼びました)が、ありました。
私と嬉野先生は本日付けで、コンテンツ事業室という部署に異動。
「水曜どうでしょう」「ハナタレナックス」「素晴らしい世界」というHTBが制作するすべての深夜番組、さらにスペシャルドラマのプロデューサーをもかけもちし、制作部の部長でもあった福屋キャップは営業部に異動。
「ハナタレ」のチーフ杉山ほかディレクターたちは、早朝と夕方の情報番組と合併した情報制作部に異動。
各番組でアシスタントプロデューサーをしていた者は、プロデュース部という新しい部署に異動。
福屋キャップを中心に立ち上げたレコードレーベル「ユメチカレコード」のスタッフは、私たちと同じくコンテンツ事業室に異動。
そして、「素晴らしい世界」は3月いっぱいで終了となり、そのディレクターたちはHTBを去ることとなりました。
制作部にいたスタッフ全員が、それぞれバラバラの部署、会社に行くことになり、それは文字通りの「解散式」でありました。
「みんなHAPPYであれ!」
福屋部長が定めていた制作部の目標であります。
視聴者をハッピーにするためには、スタッフがハッピーな気持ちで番組を作らなければならない。組織のことを考える前に、まず作り手個人が番組と向き合い、出演者と向き合い、視聴者と向き合う。そうでなければ人々に支持される番組など作れない。
そんな考えでここ10年あまり、HTB制作部は自主独立の精神で番組作りを続けてきました。
しかし、そのように自分の番組、そこにいる視聴者だけに向き合うやり方は、一人当たりの労働生産性を著しく低下させていると、会社では以前から盛んに問題視されていたそうです。
これからのHTBは、報道もスポーツも情報番組もバラエティー番組も、すべてをオールラウンドにこなせる人材を育成することを目標に、(通達された文書によれば)「オール HTBの大方針」に沿って番組作りをする、ということになりました。これから作られる番組は、これまでのしがらみを断ち切って、斬新で新しい発想のもとで作り出す。従って今まであった制作部は解体、ということになったわけです。
私と嬉野先生は「事業室」という、番組を制作する部署からは離れることになりました。しかし、みなさまにお伝えした通り、私は、これまでとなんら変わることなく、自主独立の精神で、このHTBで、番組作りを続けたいと思っています。
番組とは、人が作るものです。そして番組とは、見る人の感性に訴えるものです。人がなぜ笑うのか、なぜ感動するのか、そこにマニュアルなんて存在しない。正解もない。だから作り手は、自分の感性だけを頼りに、自分の感性が何人の人間に届くのか、その一点に死にもの狂いになる。周りをかえりみず、ひとつのことだけに没頭する。そうしなければ、人の感性を響かせることなんてできない。
でもそこに、時間と効率を突きつけられると、作り手の魂はいとも簡単に折れてしまう。効率よく、人の感性を動かすことなんてできない。すべては、時間のかかること。新しいことがパッと生まれるほど簡単なことではない。でも、やらなければいけない。すると人は無思考になり、言われたことだけをやり、目の前のことだけをこなす日常になっていく。
そうやって魂の抜け殻となった作り手が、効率よく、形だけのマニュアルに沿って次々と作り出していった番組がテレビをダメにした。テレビの魂を奪っていった。
私はそう思っています。
でも今、テレビが少しずつ魂を取り戻しつつある。作り手が少しずつ思考を取り戻しつつある。効率ではなく、時間をかけて、じっくりとモノ作りを始めている。そうすることが、そうすることでしか、結局テレビの将来をつなぐことはできないと思い始めている。そんな機運を感じています。
だから、私も今、あらためて、ひとつのことに時間をかけて、ひとつのことに没頭して、今、そこにいるあなたがたに向き合って、モノ作りをしていきたいと思っています。
これまでもそうであったように、私も、嬉野先生も、いくつものことを一緒にできるような人間ではありませんから。
解散式の席上、営業部に異動する福屋キャップから、情報制作部に異動する数名の「ハナタレ」スタッフに、「これまで作り上げてきたHTB制作部のDNAを、どうか引き継いでいってほしい」との言葉がありました。
そして、「ハナタレ」の杉山は、「必ずや!HTBに制作部を復活させる」と言ってくれました。
今日から、制作部員は、いつの日かHTBに制作部が復活する事を願って、各自の新たな持ち場へ向かいます。
平成22年4月1日。HTB 制作部はいったん!解散です!
(18:24 藤村)