1月27日(水)。藤村でございます。

藤村

1月27日(水)。藤村でございます。
嬉野先生と岩手に行ってまいりました。
日曜日の昼、盛岡で開かれたイベントで1時間ばかり話をし、その後、盛岡の街を案内してもらいました。案内人は盛岡の「文化地層研究会」の真山さん。「文化地層研究会」というカタイ名称から、地質学的な発掘かなんかやってる団体かと思われますが、まったく違います。文化は今そこに見えているものだけではなく、地層のように積み重なったものである、だから、それを掘り起こしていくことで、その街の本当の姿が見えてくる。たとえばある日。真山さんはいつものように犬の散歩をしておりました。ある学校の前で犬がウンチをしたので、「やれやれ」と腰をかがめると、ふと目の前に小さな記念碑があることに気付いた。見れば「ヘレンケラーお手植えの木」と書いてある。「なんでこんなとこでヘレンケラー?」と思って調べてみると、その昔、盛岡にヘレンケラーがやってきて、この学校に植樹をしたということがわかった。みんなに話しても誰も知らなかった。真山さんは、盛岡の小さな歴史文化をひとつ、発掘したわけだ。まぁ、そんな小さな盛岡文化の発掘現場を、ダジャレ好きの真山さんにおもしろおかしく案内され、最後は「オヤジいい加減にしろ!」と半ばあきれながらもたくさんの話を聞いた。
その夜は、盛岡の「鉈屋町」という地区の古い町屋に文化地層研究会の人たちが中心に集まって酒盛りをしてくれ、そのままその町屋に泊めさせてもらった。
鉈屋町は、盛岡の中でも城下町の風情が少なからず残っている稀少な地区で、キレイな水が湧く共同井戸なんかも残っている。でもそんな鉈屋町の古い町並をつぶして4車線の道路を作る計画が立ち上がったらしい。しかし、市民の反対運動に昨今の財政危機が重なって中止になったという。財政危機も悪くない。金がなければまともになる、ということだろう。
一方で、鉈屋町にある古い消防番屋を取り壊し、新たに建て直す計画が持ち上がったときの反対運動では、その消防番屋を昔から維持してきた人にこう言われたという。
「ここは消防の拠点だ。ここが古くて燃えやすい建物のままでいるわけにはいかない」。
消防番屋は再建されることになった。でも、新しい建物の上には、昔の番屋の雰囲気を残す鐘楼が作られることになった。
古いものを残したい、という一方で、古いままではどうしようもない、ということもある。
こんなふうに、いわゆる観光地を案内されるのではなく、いろんな目線で盛岡の街を案内されて、盛岡がとても魅力的な街に見えた。その夜は話が尽きることなく、岩手日報の若いやつらと岩手大学の学生と夜中3時まで飲んだ。
翌日は盛岡を離れ、海岸沿いの三陸方面に連れて行ってもらった。最初に訪れたのは、陸前高田にある八木澤商店という古い醤油屋だ。創業200年。
蔵を見せてもらった。
200年前の樽で、岩手産の大豆と小麦を使い、昔ながらの手間のかかる製法で醤油を作っている。
醤油ってのは本来、いろんな果物や花に含まれる数百の香りの成分があるのだという。そんなことまったく知らなかったし、そんなこと感じたこともなかった。そりゃそうだろう。普段使っている安売りの醤油にそんなチカラはない。
八木澤商店の「生揚げ醤油」は、作るのに丸2年かける。薄暗い蔵の中に昔から棲みついている菌が、じっくり時間をかけていろんな香りを作り上げていくんだろう。
八木澤商店の専務が話をしてくれた。安いというだけの理由で輸入に頼ってばかりの日本はやがて食料に困窮する。日本で食料を作り出している人を守らなければならない。だから、外国産ではなく地元の原材料を使うのだ。昨今聞きなれた「地産地消」という言葉の、本当の意味がそこにある。
さらに専務は言う。
醤油を搾り出す過程で小麦大豆のカスが出る。カスといったって、そこにも様々な菌類が含まれている。昔はそれを「金肥」といって肥料として売っていたそうだ。それを今はタダで農家に配り(ほとんどの工場では産業廃棄物として処理されているらしい)、その上、出来上がった米を普通よりも高く買い取っているという。そのぐらいやらないと今の農家はつぶれてしまうのだ。
さらに自分たちで田畑も作っている。金肥をあげた農家からもお礼として大量の野菜が届く。それらを従業員たちの「まかない飯」にあてる。
醤油屋が、ひとつの大きな食料自給のサイクルを作り出しているのだ。
すごいと思った。専務の語る言葉に何度もぐっときた。そんな専務はこの醤油屋の跡継ぎ、我々よりも全然年下の男である。
最後に八木澤商店の「まかない飯」を食わせてもらった。古い大きなテーブルを囲んで、おばちゃんが作るまかない飯。自分のところで作った米と漬物、シャケの切り身に八木澤商店の醤油をかけて食べる。すこぶるうまかった。
このあとも岩手三陸の旅は続きますが、今夜は「三陸のカキ」を食べるので今日はここまで!
また明日だ。
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(18:25 藤村)