2007年9月11日(火)
2007年9月11日(火)
嬉野です。
東別府というJRの駅のすぐそばに小さな共同湯がありましてね。
「汽車を待つ間にひとっ風呂」
なんてなことが建て屋の壁に書かれてある。
痺れました。
確かに駅から歩いて30秒。誇大広告ではないでしょう。
汽車を待つにも風呂に入る。
別府の方々は粋なもんです。
建て屋の造りは木造モルタルでね。
お世辞にも綺麗じゃない。もう築何十年だろう。
でも、戸口の脇には藤棚がこしらえてありまして、そこだけは真夏の熱線をさえぎって涼しげな影をベンチに落としておりました。
たまに温い風が吹きます。
それでも、湯上りなら涼しかろう。
ひとつ湯から上がったら、ここで涼みながら冷たいものでも飲んでやろうか。
そう思って戸口へ向かう。
向かうと昔の映画館のチケット売り場のような木作りの桟で囲われた窓口が目に入る。
歴史ある温泉場は、ここら辺の造りがシャレている。
きっと昔、活気に溢れていた時代が間違いなくあったあかし。
でも今は無人。
入湯料は百円。
ブリキの缶にコインを入れてコンクリの階段を下りる段取り。
浴場は地下です。
「お賽銭をドロボーすると罰が当たります」
そんな張り紙を脇に見ながら、とんとんとーん、と狭い階段を下りていくと、すぐ浴場の入り口に突き当たる。
入り口の扉は、夏だからか、開けっぱなしでね。
ガランと、だだっ広いタイル張りの浴場が目の前に広がりましたよ。
見ると、入ってすぐ右の壁に脱衣棚がドーンとあってね、足元には、すのこが一列、向こうまでズラッと敷いてある。
それだけ。
要するに、脱衣場と浴場の間に仕切りが無いんだね。
ワンルームなの。
実に開けっぴろげ。
おまけに、脱衣場に湯が流れてこないようにと、そこから二段ほど降りたところに洗い場の床が広がるというつくり。
大胆に省略するところはしてるけど、あくまでも快適な空間にしようという配慮が見て取れる。
大汗をかいていたので、さっさと素っ裸になってから、もう一度浴場内を見渡す。
天井が高いからか、気分が清々しました。
高窓からはね、真昼の光が隣の家の壁に跳ね返って浴場全体を控えめに明るく照らしてる。
風も、ほんのすこうし入ってくる。
浴場は、床も壁もタイル張り。昔風のこまかいタイルね。
そのガランと広いタイルの床のまん中に、楕円形の小さな湯船がポツンとひとつ埋めてある。大人が4?5人入ると、もう窮屈かな。
壁にはシャワーもなく、カランもない。
こういうの、昔は戸惑ったけど。
この頃は、こういうところへ来ると楽しくなるのよ奥さん。
慣れたら、こういう、なんにもない造りの方が伸び伸びするようになっちゃった。
さて、ちゅうことで、湯船の脇にあぐらをかいて座る。
腰掛も使わない。
楕円形の湯船の淵は、ほとんど洗い場と同じような高さ。
ただ、石鹸が湯の中に流れ落ちないように、楕円の淵だけが、ほんの少し盛り上がって、こしらえられているだけ。
だから、腰掛使わないで、床に直にあぐらかいて座る高さの方が、湯を汲み易い。
洗い桶で湯船の中の湯を汲んで体にかける。
湯の砕ける音が響きます。
もうひとつ、湯の砕ける音が響きます。
カランもシャワーもないと、こういうスタイルになる。
これが、慣れたら気分が好いのよ。
旅人の気楽さで、普通の人が働いてる時間に温泉に入るものだから他には誰もいない。
独り占めは贅沢の極みでね。
しかも日はまだ高い。
なんだか、時間が止まったようで素晴らしい。
歴史のある温泉場に行ってね、何に痺れるかというと、これです。
時間が止まってるのよ。ほんとに。
そらぁ止まる理由は、経済的な事情とか、いろいろあると思うけど。でも、とにかく設備は昔のままで設備投資は無し。
掃除だけ、してますっていうのが、ホッと出来て、私は大好きなのですよ。
この頃はね、各地に名宿が出来て、物凄い山の中に昔風な凝った造りの高級感溢れるステキな宿が軒並み作られてね、一大温泉地として世間の耳目を集めて一世を風靡してたりするけれど、長旅をする者に、あれは、あんまし楽しくない。
だってあぁいうとこは、田舎にあるだけで、田舎じゃないものね。
来るお客さんは、みんな都会の人ばかりだから。
宿も温泉場の造りも、都会の人が喜ぶ、都会の人が慣れてるつくりになってしまうのよね。
そういうことは、一泊するくらいでは気づかなかったけど。
長旅をしだすとね、旅先で、田舎に遭遇するのが何よりの楽しみになるから、だから、その土地の独特の流儀やデザインに触れられなくなると残念至極。
だから、日本中の温泉宿が、みんなオシャレになってしまうとね、田舎に都会ばかりができてしまうようで、なんだかちょっと残念な気がしてしまうんですよ。
日本中の田舎の温泉地が、みんな田舎の振りだけをして、その実は、オシャレな都会になる。
それが一番寂しいことだと、この頃は思うのです。
湯上りに、うちの奥さんと一緒に、東別府の辺りを歩きましたがね。古い家が空き家になって、どんどん壊されていてね、
この頃は、新築マンションがずいぶん建つんだそうです。
まぁ、しょうがないよね。
さて、札幌は、秋ですよ。
秋は北国ですよ。
そのうち紅葉ですよ。
ではまた明日。
あさってから、また出張なのよ。
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(16:02 嬉野)