週があけまして8月27日月曜日。また藤村でございますな。

藤村

週があけまして8月27日月曜日。また藤村でございますな。
う先生は現在、違う書き物をやっておりまして、こちらにはなかなか顔を出す機会なく、というところでありますが、元気にやっておりますのでご心配なく、奥さん。
さて、我々は来年制作予定のドラマの準備を少しずつ始めておるわけですが、毎年恒例の「HTBスペシャルドラマ」は今年も9月に放送されます。
すでに8月初旬に撮影を終えて現在編集中という段階。
監督は今年も社歴が私のひとつ下の多田けん(現スバセカD)が担当。
しかし、プロデューサーは長年勤め上げてきた四宮Pから今年、若手にバトンタッチされました。
私より4つ5つ下の数浜という男であります。世代交代ですな。普段は「夢チカ」という音楽番組を担当している男であります。
彼は入社以来長いこと報道記者をやっており、私は彼の地味なスーツ姿しか印象がありません。ひょうひょうとした、物静かな、記者らしい記者、そんな印象であります。
それがいきなりドラマのプロデューサーを任されたわけですからまったくの畑違い。こっちも多少心配になります。
「ドラマ、大丈夫かい?」
何度か聞いてみましたが、常にこの男の返事は、
「まぁ、大丈夫です」
こっちとしちゃぁ、「大丈夫じゃなさそうだから聞いてんだろ!」というところですが、常にこの男はひょうひょうとして、だからまぁ、はた目には「大丈夫」に見える。
まったく大丈夫なくせに「たいへんだ!もうダメだ!」と慌てる人間よりかはよっぽどいいわけで、だからある意味、このひょうひょうさ加減は、彼の一種の才能だと思うのであります。
しかし、そんな男が多少慌てた姿を初めて見ました。
今月頭にドラマの撮影が始まって、数日後のことであります。
「今年はずいぶん天候で苦労している」
そんな話を聞いておりました。クランクインからずっと天候が不順でスカっと晴れない。撮影スケジュールがどんどん崩れてる。
そんな中、私と嬉野先生が撮影現場を見学に行きました。
現場は札幌から100キロほど離れた滝川市、丸加高原。
「今日も雨じゃないのぉ」
「いやいや、たいへんですなぁこれはぁ」
現場に向かいながらベテランのおっさんふたり、
「こういうときに普段の行いというものが出ますなぁ」
「まったくですなぁ」
と、若手の不幸を喜ぶ了見の狭い会話をしておりました。
この丸加高原という所、去年の秋に私が福原美穂のプロモーションビデオを撮影した同じ場所であります。
その時は前日までの雨模様がうそのように晴れ渡り、雲ひとつない青空のもと、1日できっちり撮影を終えたのであります。
「普段の行いですよぉ」
「ねぇ」
「先生、私が現場に着いたら晴れますよ」
「晴れますか」
「当たり前じゃないの」
「まったくです」
「あいつらどんだけ行いが悪いんだろうね。のはははははは」
「うはははははは」
やがて了見の狭いおっさんふたりが現場に着きますと、
「ほらね」
驚くべきことにちゃんと雨は上がり、撮影開始以来始めてという晴れ間が広がったのであります。
「だいたいさぁー監督の気合いが足りないんじゃないのぉーこういう現場はさぁー気合いがあれば晴れるんだよーおたくの監督だぁれー?あーただけん?気合いが足りないんだよーあいつはさぁーどははははは」
了見の狭い先輩であります。
そこへ、新米Pの数浜がやってきました。
「藤村さん」
「ん?」
いつになく真剣な表情であります。
「お願いがあります」
「なに?」
「明日も来て下さい」
「ん?」
「藤村さん来ると晴れるんですよね」
「いや」
「来て下さい」
「いや、休みだから」
「来て下さい」
「いや」
「お願いです」
「おまえ、真剣に言ってんの?」
「わりと真剣です」
「やだ」
「来て下さい」
「やだって」
・・・普段ひょうひょうとした男の、わらにもすがる顔を初めて見ました。
しかし了見の狭い先輩は、その日を晴れるだけ晴れさせて、翌日はもちろん現場に行かず(当たり前だ。往復200キロだぞ)、結局今年のドラマは最後まで天候不順に泣かされたのでありました。
2007年HTBドラマスペシャル「そらぷち」
これは、新米P数浜が報道記者時代にずっと追い続けていたテーマをドラマ化したものです。
もともとはドキュメンタリーにしたかったテーマ、重いものです、それをドラマにする。それも1時間。短いです。とても短い。脚本には苦労したでしょう。
本日、スペシャルドラマ「そらぷち」のページがアップされました。HTBのトップページから入れます。是非、ご覧下さい。
北海道ほか数地区で、9月29日土曜日午後に放送であります。
全国ネットではありませんので、順次、いろんな地区で放送されることと思います。また、なるべく多くの地区で放送されることを願っております。
ということで、さぁ日も暮れてきましたね。
帰りましょう。また明日。
(19:10 藤村)