2007年3月16日(金)
2007年3月16日(金)
嬉野です。
私はねぇ、珈琲好きですよ。ハッキリ言って。
まぁハッキリ言うことでもないですけどね、
そんなことは。
昔ですね、
「珈琲が回る世界が回る」というタイトルの新書を読みましたね。
やっぱ珈琲好きだから(笑)。
その本にはね、珈琲を主軸にしたヨーロッパ史が書かれておりました。
珈琲は、まず一人のアラビア人の召使と共にイギリスに入ったようです。17世紀のことだったかと思います。
やがてその男がロンドンで、人を集めて珈琲を飲ませる「コーヒーハウス」というものを開くのです。
エキゾチックな新奇さも手伝って、彼の「コーヒーハウス」は、イギリスでとりあえず大当たりをしたようです。
その珈琲のアロマにおいでおいでをされながら、
やがてロンドンの街のあちこちに「コーヒーハウス」が立ち並ぶようになり、人々は目新しい「コーヒーハウス」にぞろぞろと流れ込み、「コーヒーハウス」はイギリスで大流行をしたそうです。
そうしていつしか「コーヒーハウス」には、昼間から大勢の男達が、押しかけ、居続けるようになったわけです。
これまでもね、もちろん男達が集まり居続ける場所はありました。
酒場ですね。
町々の酒場には、いつだって男達が集まり、
出される酒に酔って大騒ぎをしている。
歌いだすやつ、笑い出すやる、泣き出すやつ、
喧嘩が始まり、酒樽と一緒に通りを転げ回る奴。
始まりはいつも陽気でも、やがて度を越す者が現れだして、
最後は、支離滅裂の大騒ぎになり、夜が明け、全員へとへとになった辺りで、酔いも冷め、やっとお開きとなる。
その後には、ゴミと汚物だけがしか残らない。
ところが「コーヒーハウス」という、
この「あたらしい場で出された飲料」は、
アルコール飲料ではなかった。
多くの男達が集まる「場」で、酔っ払いが一人も居ないという、
初めての状況をヨーロッパにもたらしたのが、
珈琲だったとおいうことなのです。
ここのところが、この本の味噌でしたね。
男達は昼間から「コーヒーハウス」に入り浸るわけです。
そして、そこで出される珈琲のカフェインに、生まれて初めて頭を覚醒され、そのピキピキに冴えた頭で男達は何をはじめたのかと言うと、
「議論」をし始めたわけですよ、奥さん。
「議論」を。
で、その「議論」の中で、
はからずも男達は、政治を知り、国内外の情勢を知り、
そのことで自分たちの置かれた立場を知ってしまうのです。
徐々に男達は政治に覚醒するようになり、時の政府に批判的な意見を発言するようになるわけですよ。
公の場でですよ。
男たちはスッキリした頭で自分たちの考えを述べ始めます。
その意見は、より前進した別の意見に補完されながら厚みを増し、
やがて、その議論の中から、
「ロンドンには、こんなに多くのコーヒーハウスがあるじゃないか!コーヒーハウスを中継したら郵便がやれるんじゃないか?」
というアイデアが生まれる。
「新聞だって出来るじゃないか!だって読者は、このコーヒーハウスにこんなにいる!」
こうして「新聞」もコーヒーハウスの中で売られることになり、コーヒーハウスに入り浸る男達は新聞を読むことでますます知識を得、政治に目覚めるようになる。
あと「保険」も生まれたのかな?
とにかく近代社会であたり前になっているシステムの多くが、実はこの17世紀のイギリスのコーヒーハウスから生まれていったのだという事実は驚きでした。
で、この民衆の覚醒にイギリス当局は警戒するようになる。
結局、イギリスでの「コーヒーハウス」の流行は下火にもっていかれ、いつのまにかイギリスは奥さんが入れてくれる穏やかな「ティー」の国に変貌させられ、過激に傾く「コーヒーハウス」の飛び火は、対岸の国、フランスに飛んでいったのだそうですよ。
でも、フランス当局は、イギリス当局のように「コーヒーハウス」が民衆を政治的に覚醒させ、そのことが王政にとって不利益になるという認識に欠けていたのでしょうね。
「コーヒーハウス」を野放しにしちゃった。
だもんで、やがてパリには、はばかることなく革命を叫ぶ「アジテーションカフェ」と呼ばれる政治的にモーレツに過激な場を生んでしまうことになる。
そしてフランス革命が起き、
マリーアントワネットも断頭台の露と消える。
フランスの「コーヒーハウス」は革命家の不穏な温床になっていたのですね。
フランス革命を育て上げたのが喫茶店だったという事実。
どれだけの珈琲屋の親父が知っていることでしょう。
珈琲好きには、こたえられない本でございました。
じゃ、奥さん。
また来週。
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(13:38 嬉野)