2007年1月5日金曜日

嬉野

2007年1月5日金曜日
こんばんは。今晩も夜勤の嬉野です。
あのですねぇ、新作の編集がのっけから押し始めておりましてね、昼勤の藤村先生がですねぇ、ただ今も編集室で猛編集中で、いっこうに出て来られません。
私、11月末に、新作編集のスケジュールをビシッと確定しまして、水も漏らさぬ手際でビシビシと編集作業が進行していくように段取りましたが、DVDのシークレット映像の編集が残っておったり、番宣の編集があったりという藤村先生に番外作業のあることを把握しておりませんでしたのでね、その分だけ新作編集が押しちゃってるというわけなんでございます。
でまぁね、何をお手伝いするわけにも行きませんのでね、藤村先生が、編集室から、へばって出てこられるまで、私も実際、仕事になりませんのでね、じゃ、日記でも書くかいなと思いましてね、書いてますよ。
で、今日は何を書こうかと思いまして、とりあえず思いつくままに書きますとね。
うちの奥さんのことでも書こうかなと思ったわけでありますよ。
えぇっと、うちの奥さんとぼくは、一緒になってもう今年で17年になるんですが。
そのうちの奥さんが、ぼくに話してくれる体験談が、なんだかぼくには面白い時があって、その面白いと思ったことを文章にするとね、自分の中に行き場も無く溜まっていた想いみたいなものが、気持ち好く表に出ていってくれることがあるんですよね。
自分の体験談を書く時とはどうも違うんです。
別人が体験したこと、体験した本人も他人にわざわざ話すわけだから、どこかで微妙に印象深いんでしょうね。だから何か気持ちを共有したくて、あの人もぼくに話すのかもしれない。
だいいち、あの人は、ぼくとはまったく気質の違う人だから、ぼくなどが絶対できないような出会いをすることがあるんですよね。
三歳の頃、あの人は東京湾近くの晴海団地という所に両親と一緒に住んでいて、その頃、妹が生まれ、家の中にあれほどあった母親の愛情が、不意に自分から遠のいたように感じてでもいたんでしょうか、三歳だった女の子は、昼間、つつっと家を抜け出して、ひとりで表に散歩に出るんですね。
団地の4階に住んでいたあの人は、コンクリートの階段をひとつひとつ、小さい体で一所懸命下りていったのだと思います。
団地の敷地内は、わりと静かで、日差しも温かく風もなく、ぽかぽかとし始めた春だったそうです。
三歳のあの人は、家を出る時からそう思っていたのか、それとも表を一人で歩いているうちに、なんだかそんな気持ちになったのか、同じ団地とはいえ、まったく知らない他人の部屋のドアの前に立って小さい手でその鉄製のドアをコンコンと叩いたそうなんですね。
すると、その物音に気づいて、その部屋の人がドアを開けてくれた。
「若いおばさんだったの」
そう、うちの奥さんは記憶しているのです。
ドアを開けてくれたその若いおばさんはきっと驚いたと思います。
見たこともない小さな女の子が、一人だけで立って自分のことを見上げていたわけですからね。
でも、その女の子は、物怖じもせず言うんです。
「あたし、三号棟の近藤なの、おばさん一緒にあそんでくれない」
それを聞きながら若いおばさんの顔はしだいに笑顔になっていったそうです。
きっと三歳児の目にも、ドアを開けてくれた女の人の印象と、その部屋の感じが好かったのでしょうね。
自分のうちにはない、どこか生活感の薄い、花やいだ明るさと若やいだ清潔感が目の前のそのおばさんからも、そのおばさんの部屋からも感じられたのでしょうね。
それに、おばさんと言っても、それは三歳児の印象ですから、たぶんまだ二十代の、一人暮らしのおねえさんだったかもしれないのですから。
そうして部屋に上げてもらった、うちの奥さんは、その見知らぬ若いおばさんと二人きりで、どこか母親の愛情を独り占め出来ていた頃の気持ちがよみがえるような、なんだか幸せな春の午後を過ごしたのだと思います。
おばさんは、テーブルの上に、綺麗なティーカップに淹れられた紅茶と、ピンクやグリーンやらのカラフルな色が楽しげなコンペイトウを出してくれたそうです。
ずいぶん年の離れた二人は、食卓のテーブルを挟んですわり、とりたてて何を話すでもなく、時折はにかんだような笑い顔を見せる女の子を眺めながら、若いおばさんも唐突な出会いを楽しんでいたのかもしれないなと思うのです。
若いおばさんが棚の上から持ってきてくれた、入れ子のマトリョーシカ人形を前にして、三歳の女の子は、開けても開けても出てきてしまうその人形が不思議で、いつまでも面白そうに見ていたそうです。でもきっと、その時、人形を前にして楽しそうにする、その三歳の女の子のあどけなさに、若いおばさんが心を満たされていたことには、その三歳の女の子は気づかなかったろうなと思うのです。
まぁ、これだけの話なんですが、なぜだかぼくはこの話がとても好きで。
なんか、ふたつの孤独な魂が、穏やかでひっそりとした春の午後に、そっと引き会わされて、思いがけず慰められ満ち足りてしまったような、そんな幸福な時間が、その部屋の空間にいつまでも横たわっているような、なんだか、そんな気がするんですよね。
おおっと、呑気なことを書いてるうちに、どうやら藤村先生は帰宅されてしまったようでございます。
じゃ、また来週。
藤村先生は、この週末も編集に出てくるそうでございますよ。
今週も解散!
【水曜どうでしょう最新作放送決定!】
全国に先駆けまして!
1月17日(水)夜11時15分からHTBにて放送開始!
過去最大級のロケ日数を費やした大型企画!
現在のところ放送回数は未定!
全国各局での放送が続々決定!詳細は近々発表!
【DVD第8弾「激闘!西表島」予約受付中!】
全国のローソン店頭にあるロッピー端末にて予約受付中!
オリジナルポストカード10枚セットの予約特典アリ!
商品番号!「387088」(サバンナおばば)
3月21日(水)午前0時の時報とともに全国のローソンにて受け渡し解禁!各自討ち入り!
また、「道内各HTBグッズ販売店」並びにネット通販「HTBオンラインショップ」でも同日より販売開始!
DVD第7弾「ヨーロッパ21カ国完全制覇」の追加予約も同じく受付中。
商品番号「393321」(サンキューさんざん21カ国)
こちらの受け渡しは、2月14日から。
(22:57 嬉野)