10月16日、週があけまして月曜日。藤村でございます。

藤村

10月16日、週があけまして月曜日。藤村でございます。
札幌は本日、秋の青空がすっきりと広がりまして、気持ちのよい1日でございました。
さて先々週になりますが、岩手で地上デジタル放送がスタートしまして、そのイベントにわたくし呼ばれました。
「岩手未来博」と題した、「岩手を見直そう」「岩手を積極的にアピールしよう」というようなイベントで、私は開口一番「岩手はアピールする必要なし!」「むしろ黙っててほしい」と言ってしまいました。
岩手。実は昔から、個人的に何度か旅をした思い出深い土地です。
遠野。カッパが棲むという小さな川にたたずんでみる。
南部曲家で、ひんやりとした土間の感触を確かめる。
小さな県道の橋の上から川をのぞきこむと、イワナがゆっくりと体をくねらせている。
岩手は北海道に次ぐ日本第2位の広さを持つ。そのくせ盛岡以外にたいして大きな街がない。だから、これといって思い浮かぶものがない。だから、「行こう!」という強い動機が生まれない。岩手は、観光するのにつかみどころがない県だ。
でも、三陸海岸に出れば魚が美味い。山の幸も豊富。なにより餅文化が浸透して私好み。
こんな土地、人には教えたくない。「岩手ってなんにもない」。そう思わせておけばいい。旅の一番の楽しみは、人に知られていない、自分だけの「心地の良い場所」を見つけることだ。だだっ広くて、なんにもない岩手は、だから旅をするのに最も心くすぐられる土地なのだ。
岩手はこのままであってほしい。「岩手をアピールしないでほしい」。黙ってても、いや、黙ってるからこそ人を惹きつける、岩手はそういう場所なのだ。
ま、そういう意味のことを申し上げたわけです。
盛岡に住む若者と対談のようなこともしました。
帽子屋の男、藍染をやっている男、ほとんどプータローでDJやってる男、ライブハウスを開いた男、そしてカフェをやってる女性。
何人かは東京へ出て、盛岡に戻って来たそうだ。
「今、東京から逃げてきたって言ったけど、本当にそう思ってる?」
「うーん、どうだろ」
「東京じゃなくて、盛岡の方が好きだから戻って来ただけなんだろ?」
「本当は、そうですね」
「『逃げてきた』っていうのは、世間的にそういう言い方が一般的だから、自分もつい言っちゃったんじゃないの?」
「まぁ、確かに」
なぜか今でも東京から戻ってくると、何かに負けたような印象を持たれる。でも、例えば「盛岡で初めてライブハウスを開いた男」の話。オープン当時、人前で演奏できるバンドは、盛岡に9組しかいなかったそうだ。それが今、50組になった。彼がやったことは、東京でライブハウスをやるより、もしかしたら難しいことだったかもしれない。
「これから盛岡のために、みんなはどんなことをやっていけばいいと思う?」
司会の女性が聞いた。
「うーん・・・」
みんな口ごもった。彼らの気持ちを代弁した。
「おまえらはさぁ、何かのためにやってるとは思ってないもんね?だから答えられない」
答えたところで、多分「盛岡を少しでも元気にする」とか、そんな通り一遍の言葉しか出てこないだろう。どっかで聞いたフレーズを口にするだけだ。
でも、具体的に「盛岡で彼らがやるべきこと」はちゃんとある。
盛岡という田舎町で、彼らは何をすればいいのか?
「例えば、カフェと雑貨屋をやってる彼女。カフェや雑貨屋なんて、多分、ほとんどの女の子がやりたい仕事でしょ。誰でも一度はやってみたいと思ってる。それをあなたは、今やっているわけだ。だったら、あなたが盛岡ですべきことは、カフェをやりながら幸せに暮らすことでしょ。盛岡で雑貨屋とカフェをやりながら幸せに暮らす。それさえすればいい。東京の人は、そんなことされたら絶対にかなわない」
「なるほど・・・わかりやすい」
「あんたのお店、儲かってる?」
「ぜんぜん」
「でもいいじゃない。暮らしていければ」
別にカフェをやってない奥さん方だって同じ。盛岡で、岩手で、自然にあふれた環境の良い街で、幸せに暮らす。それさえできれば、誰もあなたたちにかなわない。そんなあなたに余裕があったら、チェーン店のファミレスではなく、盛岡でカフェをやってる彼女の店でお茶を飲む。メジャーのCDを買うのを1回やめて、盛岡のバンドのインディーズを一枚買ってみる。盛岡の若者が手を真っ青にして作ってる藍染のTシャツを1枚買ってみる。たったそれだけで、彼ら、彼女は幸せに暮らし、外にアピールしなくても、いつのまにか盛岡の文化が育っていく。
夜、盛岡の街へ出ました。
繁華街は思いのほかコンパクトで、きれいに整っていた。街には2本の川が流れている。サケが上ってくるそうだ。
「県庁所在地でサケが上ってくるのは、札幌と盛岡だけ」
なんともいい街だ。
駅の近くのホテルまで岩手朝日の人たちが一緒に歩いて送ってくれた。ホロ酔い気分で駅を見て、はじめて気がついた。
「あ、見覚えがある!オレ、ここ来た!」
サイコロ3の最後が、盛岡駅だった。
「あー、ちょっと懐かしい」
でも、あの時に見た盛岡駅と、今見ている盛岡駅では、ずいぶんと印象が違った。そこに住んでいる人たちの顔を見られたことで、「盛岡」という街がずいぶん身近に感じられた。
どうでしょうの旅も思い出深いが、3人と離れたこういう旅も、思い出深い。
岩手の皆様、そういうことで、「もの言わぬのが美徳」、その県民性を思う存分発揮して、くれぐれも「岩手はいいとこ!」などと慣れない宣伝はしないように。そして、幸せに暮らして下さい。
今月末、また岩手におじゃまします。仕事が終わったら、少しだけ旅してまいります。
いいとこがあるらしいので。
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HTB制作陣を中心に撮影した「恋はリズム」のビデオクリップがCDエクストラ対応で付いております。
札幌から1時間弱、空知平野の滝川・丸加高原で先月撮影したPV。パソコンに入れれば、小さい画面ではありますが全編ご覧になることができます。
あの日、我々が見た北海道の抜けるような青空を、福原美穂の見事な歌いっぷりと共に是非ご覧ください。
この曲、札幌で開催されるノルディックスキー世界大会の公式応援歌になりました。道産子ならば、道産米を食べ、道産のアーティストの曲を聴く。さすればいずれ沖縄音楽にも負けない環境ができましょう。
MADE IN HOKKAIDO。
どうでしょう共々、夢チカレコードもどうぞご贔屓に。
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(19:24 藤村)