2006年1月25日水曜

嬉野

2006年1月25日水曜
嬉野です。
昔。小学生の頃。
学校でうんこをするということをしなかったものだった。
あれはなんだろう。
結局、あの自らより発する音と芳香を他人に探知されると、どことなく自分をおとしめるようで、きっとそこに入る前の自分には戻れないのではという気がして、子供ながらにあの個室にしゃがむのをためらわせていたのかもしれない。
しかし、もうひとつ考えられることがある。
あそこは冬に寒かったという事実である。
あの個室で尻をだしたままで、しゃがんでるいのは寒いのである。
私が小学生であった頃の小学校の個室は水洗ではなかったので、便器の下からも容赦なく木枯らしが吹き上げてきたものである。
あれでは、出る物も出ないのであった。
そこから数十年の時を隔てて今はどうか。
四十を過ぎたこの歳になっても会社でうんこをすることはないのかと言うと、
否である。
するのである。
勿論、年とともにいろんなことに頓着しなくなるということがある。
それが、私をして個室に行かしめる後押しをしているのもまた事実である。
しかし、最大の原因は、ウォシュレットになったからだと思うのだ。
日本は豊かになった。冬場も寒くないのである。
というか、すこぶる快適なのである。
快適になるとアソコへ行くのもわりと楽しみになるのである。
そうなると勢いあそこで長居することにもなるのである。
面白いものですね。
で、そうなると、ちょこちょこっとしたところに目が行き始める

個室のドアをしめて、あそこにしゃがんでほっと一息つく。
そこまでの行為に及ぶと後は一気に暇になるので、本格的に催すまで、あたりを見回しながら暇つぶしをするのである。
そうしていたところ個室の壁に割れている個所があるのを見つけたのだった。
壁の一箇所が割けた様に割れ、穴があきヒビが入っている。
立ち上がって良く検分すると、明らかにこの穴は人為的に開いたものであることが分かる。
誰かが力任せにぶん殴ったのである。
ちょうど腰溜めにかまえた拳固をスナップをきかせながら個室の壁めがけて打つ。
だが、個室の壁は強化プラスチックであるので相当に固い。
それを拳の一撃で割っている。
怒りであろうと思う。
つまり私の近所にかつて我を忘れる怒りにかられた者がいるということであり、同時にその怒りの原因になった者もいるということである。
私は、その穴を眺めながら、この穴の開いた原因のその原因が、私でないことを祈るばかりであった。
もうひとつ気になるものがあった。
腰掛けた斜め前方に三角の板を渡した棚がある。
壁と壁の角を利用しているので三角なのだ。
棚板の厚みは2cmほど。
この棚板の壁と接する外周を鉛筆で縁取りした跡があったのである。
かつて、鉛筆を持ったままここに腰掛けた者が、暇に飽かして棚板の接する壁に縁取りをしたのであろう。
それだけのことだが、どこかしらやってしまったその気持ちがわかるようで妙な共感と親近感を覚えた。
ところが本日。
この壁の正面に小さな張り紙が出たのである。
よく見ると次のようなことが書いてあった。
「左のグループにあって、右のグループにないもの」
「集い」にあって→「集会」にない。
「リタイア」にあって→「ギブアップ」にない。
「アルマーニ」にあって→「ベルサーチ」にない。
「亀有」にあって→「下北」にない。
なんと「なぞなぞ」なのである。
答えは来週と書いてあるのである。
どうやら、個室で憩っている者は、少なからずいるもののようである。
【2005年新作(全八夜)放送決定】
●HAB北陸朝日さん→06年1月25日(水)25:15?
(16:00 嬉野)