8月20日木曜日。藤村でございます。
DVD第12弾の作業、すべて終了いたしました。
あとは皆様のお手元に無事届けるのみ。
で、ようやく休みが取れて、先週末から一番下の坊主と2泊3日で旅をしてきました。
二人のおねぇちゃんたちはそれぞれ部活やら塾やらがありまして男二人、車中泊の旅であります。
行き先は釧路。
屈斜路湖を源として釧路湿原の中をゆったり流れる釧路川。こいつを2日間に渡りカヌーで下ろうという計画であります。
カヌーをやった者ならば一度は下っておきたい日本の名川。坊主にも美しい北海道の川景色とカヌーの楽しさを知ってもらいたい。
「おもしろいぞぉー」
「行きたい行きたい!」
坊主は夏休みが始まる前から楽しみにしておりました。
夜が明ける前に札幌を出発し、屈斜路湖に着いたのはお昼ごろ。
メシを食ってカヌーの準備をし、屈斜路湖の源流近くへ行く。
「うわぁー!すごいキレイ!」
釧路川の源流付近は川底までしっかり見えるほど透きとおって美しい。
「どうだぁースゴイだろぉー来てよかっただろう!」
「うん!よかった」
坊主は小学5年生。たぶんこうして無邪気に親父の言うことを聞いてくれるのも、もう一、二年のことだろう。
「いいかおまえは前だ!前はエンジンだからな、必死に漕げよ!オレがコントロールする」
「わかった!」
人生の中で父と息子が一緒に遊べる時間は、悲しいほど短い。
お互いのこれからのために、少しでも良い思い出を作っておきたい。
「よーし!行くぞ」
「おう!」
カヌーを清冽な流れの中に漕ぎ出す。でっかいアメマスが悠々泳いでいくのが見える。
「きれいだなぁ」
「すごいねぇー」
出発したのは午後2時。およそ15キロ先の弟子屈町まで下る予定だ。
ゆったりとした釧路川といえど、さすがに源流部は思いのほか流れが速い。そして倒木があちこちで流れをふさいでいてちょっと危険だ。
倒木を見つけるたびに、「よし右側を抜けるぞ!」「今度はすぐに左だ!」、ゆったりした川旅どころではなく、常に慌しく二人で協力してカヌーを操作する。前に座る坊主は何度か倒木の枝に顔面を直撃されていた。
「意外と・・・きびしいなぁ」
「痛いって!おとう!」
「よし、ちょっと釣りしてみるか!」
休憩がてら上陸ポイントを見つけて釣竿を出してみた。釧路川はアメマスが多く生息する川だ。しかし・・・
「釣れねぇーなぁー」
ひとっつも釣れやしない。そうこうするうちに雲行きがだんだん怪しくなってきた。
「もう行こうよぉー」
坊主が不安そうな表情を見せ始める。
「よしわかった。こっからは休まずに一気に下るぞ」
「あとどのぐらい?」
「んーまだ10キロぐらいあるかな」
「そんなにあんのー・・・」
坊主の表情が一気に暗くなる。
「大丈夫だ!猛スピードで行くぞ!」
今にも降り出しそうな薄暗い空の下、二人でガシガシと漕ぎ進む。
「うわっ!」
坊主が声をあげた。
ザーザーと不気味な音が聞こえる。白波が立っている。前方に急流だ。
(釧路川って、ゆったりじゃねぇのかよ・・・)
坊主の背中が固まっている。
「いいか!怖がって手を止めたらダメだぞ!流れより早いスピードで漕げ!」
坊主がパドルを握りなおす。流れが徐々に速まる。
「よーし突入!イヤッホーイ!」
無理やり明るい雄叫びをひとつあげて白波に突入する。
「漕げ!漕げ!漕げ!漕げ!」
「うるさい漕いでるよ!」
前方で坊主が叫んだ。急流を乗り越えた。
「いやぁー!カヌーおもしろいなぁ・・・なぁ!」
坊主は答えなかった。
父と子が一緒に遊べる時間は悲しいほど短い。できるだけ良い思い出を・・・「うわぁ!」坊主がまた叫んだ。
今度は早い流れの中に倒木が現れた。急いで左によけないとこのまま倒木に激突する!
「漕げ!漕げ!こぐぇ!こぐぇー!あぁー・・・ダメだぁー」
カヌーは早い流れに翻弄され、そのまま吸い寄せられるように倒木に激突した。あのユーコンでの鈴井・大泉艇と同じく、流れに横向きになってカヌーが倒木に張り付いてしまった。
周りに助けてくれる人はいない。流れに押し付けられながら、親子二人で必死に倒木から逃れようともがく。
「大丈夫だ!少しずつ!少しずつ前へ出るぞ!」
カヌーを流れに戻そうと倒木を手で押しやる。でも体を傾けるとカヌーが転覆する。とそのとき、坊主の体がぐらりと左に倒れ、片手が水面に没した!
私はとっさに手を伸ばし、坊主の背中をぐっと掴んでカヌーに引きずり上げる。
「ありがとう!おとう!」
「がんばれ!もう少し!」
力をふりしぼり、無理やり倒木を押しやる。カヌーが前へ出た。脱出成功。
「よーし!よーし!やったな!やったな!」
坊主は前をじっと見て、こちらを振り向かない。ただ、うんうんとうなずいているのはわかる。
気がつけばもうあたりは暗くなり始め、そして、雨が降り出してきた。
「がんばれ!もうちょっとで着くから」
雨の中、無言でカヌーを漕ぐ。そうして目的地の弟子屈に着いたのは、午後5時だった。
雨の中、泥だらけになりながらカヌーを片付ける。
坊主はずっと雨に震えながら無言だった。ちょっと押せばわんわん泣き出しそうだった。
「カヌー楽しかっただろ!」
とは、もうさすがに言えない。
鈴井、大泉に続き、私はもうひとりカヌー嫌いを作ってしまった。
それから温泉に入り、うまいメシを食い、二人で車の中に布団を敷いた。
「・・・あの倒木に引っかかったとき、怖かったよな」
「・・・死ぬとこだった」
坊主はようやくあのときの気持ちを言葉に出して言った。
「もうあのまま川に飛び込んで、岸まで泳いで、歩いて帰ろうかと思った」
「そんなこと思ってたのか」
その夜、坊主は車中泊をしていた駐車場でクワガタを捕まえた。メスだったが、ずいぶんうれしそうにしていた。
「来てよかったよぉー!」
機嫌はなおったようだったが、翌日はもう川下りはやめて、湿原を二人で歩いた。
そしてまた車中泊をして3日後に札幌に戻った。
父と子が一緒に遊べる時間は悲しいほど短い。
できるだけ良い思い出を作りたいが、なかなかうまくはいかない。
でも、坊主が倒木に引っかかったとき言った「ありがとう!おとう!」という言葉は、たぶんやつが生まれて初めて本気で言った「ありがとう」だったんじゃないかと思っている。
それだけで、もう満足だ。
坊主はきのうから学校が始まった。
坊主の小五の夏休みは終わった。
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ローソンロッピー端末商品番号・・・301779(三十路いななく!)
(22:20 藤村)
DVD第12弾の作業、すべて終了いたしました。
あとは皆様のお手元に無事届けるのみ。
で、ようやく休みが取れて、先週末から一番下の坊主と2泊3日で旅をしてきました。
二人のおねぇちゃんたちはそれぞれ部活やら塾やらがありまして男二人、車中泊の旅であります。
行き先は釧路。
屈斜路湖を源として釧路湿原の中をゆったり流れる釧路川。こいつを2日間に渡りカヌーで下ろうという計画であります。
カヌーをやった者ならば一度は下っておきたい日本の名川。坊主にも美しい北海道の川景色とカヌーの楽しさを知ってもらいたい。
「おもしろいぞぉー」
「行きたい行きたい!」
坊主は夏休みが始まる前から楽しみにしておりました。
夜が明ける前に札幌を出発し、屈斜路湖に着いたのはお昼ごろ。
メシを食ってカヌーの準備をし、屈斜路湖の源流近くへ行く。
「うわぁー!すごいキレイ!」
釧路川の源流付近は川底までしっかり見えるほど透きとおって美しい。
「どうだぁースゴイだろぉー来てよかっただろう!」
「うん!よかった」
坊主は小学5年生。たぶんこうして無邪気に親父の言うことを聞いてくれるのも、もう一、二年のことだろう。
「いいかおまえは前だ!前はエンジンだからな、必死に漕げよ!オレがコントロールする」
「わかった!」
人生の中で父と息子が一緒に遊べる時間は、悲しいほど短い。
お互いのこれからのために、少しでも良い思い出を作っておきたい。
「よーし!行くぞ」
「おう!」
カヌーを清冽な流れの中に漕ぎ出す。でっかいアメマスが悠々泳いでいくのが見える。
「きれいだなぁ」
「すごいねぇー」
出発したのは午後2時。およそ15キロ先の弟子屈町まで下る予定だ。
ゆったりとした釧路川といえど、さすがに源流部は思いのほか流れが速い。そして倒木があちこちで流れをふさいでいてちょっと危険だ。
倒木を見つけるたびに、「よし右側を抜けるぞ!」「今度はすぐに左だ!」、ゆったりした川旅どころではなく、常に慌しく二人で協力してカヌーを操作する。前に座る坊主は何度か倒木の枝に顔面を直撃されていた。
「意外と・・・きびしいなぁ」
「痛いって!おとう!」
「よし、ちょっと釣りしてみるか!」
休憩がてら上陸ポイントを見つけて釣竿を出してみた。釧路川はアメマスが多く生息する川だ。しかし・・・
「釣れねぇーなぁー」
ひとっつも釣れやしない。そうこうするうちに雲行きがだんだん怪しくなってきた。
「もう行こうよぉー」
坊主が不安そうな表情を見せ始める。
「よしわかった。こっからは休まずに一気に下るぞ」
「あとどのぐらい?」
「んーまだ10キロぐらいあるかな」
「そんなにあんのー・・・」
坊主の表情が一気に暗くなる。
「大丈夫だ!猛スピードで行くぞ!」
今にも降り出しそうな薄暗い空の下、二人でガシガシと漕ぎ進む。
「うわっ!」
坊主が声をあげた。
ザーザーと不気味な音が聞こえる。白波が立っている。前方に急流だ。
(釧路川って、ゆったりじゃねぇのかよ・・・)
坊主の背中が固まっている。
「いいか!怖がって手を止めたらダメだぞ!流れより早いスピードで漕げ!」
坊主がパドルを握りなおす。流れが徐々に速まる。
「よーし突入!イヤッホーイ!」
無理やり明るい雄叫びをひとつあげて白波に突入する。
「漕げ!漕げ!漕げ!漕げ!」
「うるさい漕いでるよ!」
前方で坊主が叫んだ。急流を乗り越えた。
「いやぁー!カヌーおもしろいなぁ・・・なぁ!」
坊主は答えなかった。
父と子が一緒に遊べる時間は悲しいほど短い。できるだけ良い思い出を・・・「うわぁ!」坊主がまた叫んだ。
今度は早い流れの中に倒木が現れた。急いで左によけないとこのまま倒木に激突する!
「漕げ!漕げ!こぐぇ!こぐぇー!あぁー・・・ダメだぁー」
カヌーは早い流れに翻弄され、そのまま吸い寄せられるように倒木に激突した。あのユーコンでの鈴井・大泉艇と同じく、流れに横向きになってカヌーが倒木に張り付いてしまった。
周りに助けてくれる人はいない。流れに押し付けられながら、親子二人で必死に倒木から逃れようともがく。
「大丈夫だ!少しずつ!少しずつ前へ出るぞ!」
カヌーを流れに戻そうと倒木を手で押しやる。でも体を傾けるとカヌーが転覆する。とそのとき、坊主の体がぐらりと左に倒れ、片手が水面に没した!
私はとっさに手を伸ばし、坊主の背中をぐっと掴んでカヌーに引きずり上げる。
「ありがとう!おとう!」
「がんばれ!もう少し!」
力をふりしぼり、無理やり倒木を押しやる。カヌーが前へ出た。脱出成功。
「よーし!よーし!やったな!やったな!」
坊主は前をじっと見て、こちらを振り向かない。ただ、うんうんとうなずいているのはわかる。
気がつけばもうあたりは暗くなり始め、そして、雨が降り出してきた。
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雨の中、無言でカヌーを漕ぐ。そうして目的地の弟子屈に着いたのは、午後5時だった。
雨の中、泥だらけになりながらカヌーを片付ける。
坊主はずっと雨に震えながら無言だった。ちょっと押せばわんわん泣き出しそうだった。
「カヌー楽しかっただろ!」
とは、もうさすがに言えない。
鈴井、大泉に続き、私はもうひとりカヌー嫌いを作ってしまった。
それから温泉に入り、うまいメシを食い、二人で車の中に布団を敷いた。
「・・・あの倒木に引っかかったとき、怖かったよな」
「・・・死ぬとこだった」
坊主はようやくあのときの気持ちを言葉に出して言った。
「もうあのまま川に飛び込んで、岸まで泳いで、歩いて帰ろうかと思った」
「そんなこと思ってたのか」
その夜、坊主は車中泊をしていた駐車場でクワガタを捕まえた。メスだったが、ずいぶんうれしそうにしていた。
「来てよかったよぉー!」
機嫌はなおったようだったが、翌日はもう川下りはやめて、湿原を二人で歩いた。
そしてまた車中泊をして3日後に札幌に戻った。
父と子が一緒に遊べる時間は悲しいほど短い。
できるだけ良い思い出を作りたいが、なかなかうまくはいかない。
でも、坊主が倒木に引っかかったとき言った「ありがとう!おとう!」という言葉は、たぶんやつが生まれて初めて本気で言った「ありがとう」だったんじゃないかと思っている。
それだけで、もう満足だ。
坊主はきのうから学校が始まった。
坊主の小五の夏休みは終わった。
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「日記本2」が現在、おなじみの各所にて発売中です!
→HTBオンラインショップ。
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→全国の紀伊國屋書店さん店頭。
→全国の三省堂書店さん店頭。
【DVD第12弾!7月15日(水)から予約開始!】
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(22:20 藤村)


