いやおい、長げぇなぁ。

なにがって、う先生の日記ですよ。

今さっき読みましてね、「おい長げぇよ」とまず思いましたよ。

そして「すごいなぁこれは」と思いましたよ。

なにがすごいって、これほどまでに躍動する、と言いますか、話が飛躍する展開はないですよ。

いいですか。


>7月25日(金)。嬉野です。

>このところ札幌は蒸しますよ。

まずは天気の話ですよ。このところ札幌は暑いと。

>「あぁ、40年くらい前の子供時代の夏って、九州だってこんな感じの暑さだったよなぁ」・・・

先生、このところの暑さから昔を思い出したんですね。

>でまぁ、先日のことですがね、

ハイもう終わりですね。暑さの話は終わり。夏の思い出を語るわけじゃなかったですね。

>うちの奥さんと札幌の老舗デパートへ行きましてね、そこのレストランで昼飯を食べました。

メシの話ですよ。

>嬉野さんの子供時分なんてなぁねぇ奥さんさぁ、デパートのレストランで家族が食事をするというのは晴れの日のことでね、いや、お天気の話じゃないのよ。

わかってますよ。んなこと。

>ほれ、晴れ着とか言うじゃないのよ。あの晴れ。

わかってますって。いいからメシの話しなさいよ。デパートのレストランで?何があったのさ。

>なんでそんなとこで夫婦してお昼ご飯を食べたかというと、そのデパートの金券を三千円分いただいたからでして。

あーそう。よかったじゃないの。

>で、夫婦で豪遊!ということでね、行きました。

おー。それで?

>その帰りのことです。

なんだよ!レストランの話じゃねぇのかよ!

>エスカレータで一階上の催事場へ行きましてね、

レストラン終わりかよ!

>そしたら世界のお菓子見本市みたいなものが実にコンパクトに催されておりましたね。

菓子の話かい!世界の菓子の話かよ!

>で、その催事場を二人で歩いていた時にね、

おー。

>私のこの目に擦り寄ってくる景色があったのよ。

なんだよ。珍しい菓子でもあったのかい。

>それを不意に見て、私の体中の細胞がホッとしてる気がしたの。

なんだよオイ!あんたの細胞を揺さぶる菓子ってなんだよ!

>そのホッとしてる程度が半端じゃなく、もの凄くてね、

どんなスゲェ菓子なんだよ!

>ずいぶん長い間こんなにホッとしたことはないというか、

もったいぶんなって!早く教えろ!

>でまぁ、私が何を見たかというと、

おー!


>盆提灯でしてね。


あ?

かっ!菓子じゃねぇのかよ!

おめぇーさっき「世界の菓子見本市」に行ったって言っただろ!

チョコの話じゃねぇのかよ!チョーチンの話かよ!

>あれ?拍子抜けしました?

うるせぇー。拍子抜けじゃねぇよ。怒ってんだよ!

>私はそのフロアの隅に地味に飾られているお盆の提灯の群れを久々に見てね、もの凄く心がリラックスしていくのが分かったのですよ。

あーそうかい。

なんだ?結局あんたはレストランでもなく、世界の珍しい菓子でもなく、チョーチンの話がしたかったんだな。だったら早く言えよ!

>でも、それだけではないとどうしても思えた。

チョーチンでもないのかい!

>60年前の戦争で、人がたくさん死んだ。

せ・・・戦争の話か。

>お盆というのは、死んだ人が帰って来る日。

そーだな。

>あの世から、人ならぬ者たちが戻ってくる日。

ん?お化けの話か?

>その象徴が、亡者の道しるべとして、お盆の闇を照らす盆提灯。

おー!チョーチンの話だやっぱり。

>あの世への入り口。

>それ、それ。

>「あの世の入り口を見た」。

>多分、私はそう思ったのだと思います、奥さん。


・・・あ?


>久しぶりに盆提灯を見た懐かしさなどではなく、
>私は、久しぶりにあの世の入り口を見たのです。
>ここに入り口があったんじゃないか!

・・・デパートの催事場に?あの世の入口が?すごいこと言うなぁ。

>ここから、あの世へ分け入って行ける。

行ける・・・のか。

>行けるじゃないか。

いや行けねぇーだろ。

>いや、別に奥さんね、あの世というのはさぁ、死んだ人の世界とかそんなところではなくてね、

あ、違うのかい?

>この世とは価値観のまったく違う、もうひとつの世界が、本当はあるのだと認識することだというね、ことを言っておるんですよ。私はさ。

・・・?

>ほら、奥さんが毎日覗かれる鏡ね。

あー鏡?

>あの鏡を覗くとさぁ、覗くたんびに綺麗な御婦人が鏡の中に毎回見えると思うんですけどね、

余計なこと言わんでもいい。

>じっと見てるうちに、なんだか水に飛び込むようにその鏡の中の世界へ分け入っていけるのではないかしらん、てなことをね、思いませんでした?子供の頃に。

んー・・・まぁ・・・わからんでもないけど。

>いや、ここでね、
>「そーです!思いました!」というね、
>力強いお返事が欲しいんですよね。

いや、んなゴリ押しされても。

>お感じになりませんでしたか?

んー・・・そんなには感じないねぇ。

>奥さん!

奥さんじゃねぇし。

>鏡の中に!

いや・・・

>確かなイメージの広がりを!

いや!ねぇな。まったく無い。

>ま、感じたことにしてください。

いや感じてねぇんだって!

>先に進めませんからね。

強引だな。あんた。

>そういうことでね、ここにとどまらず別の世界へイメージを広げていけてしまう能力が実は人間にはあって、この世で虜になったように暮らす者でもそうやってイメージを広げながら人は自分の中で鬱積していくこの世で背負わされた重荷を解放する場所を得て生きていた。

・・・もうね、こうなると半分以上意味がわかりませんもんね。

いや、おれだって努力はしましたよ。「蒸し暑い」→「デパートのレストラン」→「世界の菓子」→「チョーチン」→「第二次大戦」→「お化け」→「鏡」と、躍動感あふれる話の展開になんとかついてきましたよ。

しかしやっぱり、強引なんですよ。

奥さん!そう思うでしょう!そういうことにしてください!そうでないと先に進めません!と。

この強引さが、論理を跳躍させる原動力なんですね。でなきゃ普通は破たんしますもの。

私はね、それがスゴイと思うんですよ。

人に何かを伝えるとき、まず「理屈が通っていること」「簡潔なこと」が必要であると、誰しもが思ってるわけです。

これは間違いじゃない。

しかしですね、理屈と簡潔さだけの文章など、実は人の心に伝わらない。

理屈も簡潔さも備えない、「どーですか奥さん!」「そーでしょう奥さん!」「ね、奥さんそーいうことで」という強引な話の展開にこそ、人は惹かれるものなのであります。

そういう意味で、私は、昨日の日記はスゴイ!と、心から思ったのであります。

結局、なにが言いたかったのかわからなかったにしても!です。


さ、ドラマ「歓喜の歌」。明日から音楽や効果音を付ける作業をし、いよいよ今週、完成の予定であります。

というわけで本日はここまで。

では。

藤村でした。







(16:31 藤村)

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